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過熱するミッドレンジオシロ市場1GHz〜4GHz帯域品は充実一途(2/3 ページ)

ハイエンドのオシロスコープ市場では、“業界最高”の称号を得るべく、激しいスペック競争が繰り広げられている。しかし、多くのユーザーにとって現在いちばん注目すべきなのは、1GHz〜4GHzの帯域をサポートするミッドレンジ品であろう。実際、計測器メーカーは、このランクの製品についても注力しており、ユーザーには非常に幅広い選択肢が提供されるようになっている。

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オプション機能の充実

 一方、R&S社の競合企業も黙って見ているわけではない。ミッドレンジの自社オシロスコープの競争力を強化するために、価格、性能、機能の組み合わせに対してそれぞれ独自の考えを持っている。

 横河電機の米国法人(Yokogawa Corp of America)で高周波数機器担当製品マネジャを務めるJoseph Ting氏は、「オシロスコープの性能は、もはや帯域だけによって定量化することはできない。そのほかにも、性能を表す一般的な指標はいくつも存在する。例えば、ノイズ/精度、周波数応答性能、波形の取得レート、メモリー深さ、リアルタイム解析機能、取得したデータの解析機能、負荷の大きい条件における応答性などがある」と述べる。横河電機のオシロスコープには、ミックスドシグナルオシロスコープの「DLM6000シリーズ」やデジタルオシロスコープの「DL6000シリーズ」といった製品がある。帯域は500MHzまたは1GHzで、DL6000シリーズには帯域が1.5GHzのモデルもある。それらの製品は、波形パラメータの自動測定が可能であり、グリッチや異常を検出するためのツールを備えている。また、ノイズ低減技術を採用しており、シリアルバス解析や電力測定のためのさまざまなオプションも提供している。両シリーズのアナログ入力は4チャンネルで、DLM6000のロジック入力は16ビットまたは32ビットである。

写真2「WaveRunner」
写真2「WaveRunner」 (左)がLeCroy社のWaveRunner。帯域は最大2GHzである。このWindowsベースのオシロスコープでは、MIPI、I2C、SPI、UART、RS-232、CAN、LIN、FlexRayなどをサポートするパッケージを利用することができる。同社の新たな測定/グラフ化パッケージを使えば、デジタルオーディオ音源からの左右チャンネルのデータを表示することが可能になる(右)。アナログ値に変換されたオーディオ波形を、時間軸上のグラフとして表示することもできる。ちなみに、ここに示した例は、「ピンクフロイド」の楽曲の約0.5秒分を表示した結果である。

 一般に、ミッドレンジのオシロスコープには、さまざまなオプションを組み込むことができるようになっている。競争の激化とともに、ベンダーらは、さらに多様な機能を搭載しようと努力を続けている。例えば米LeCroy社は2010年8月、Windowsベースのオシロスコープ「WaveSurfer」、「WaveRunner」、「WavePro」、「WaveMaster」に、一連のシリアルデータ関連の機能拡張を加えた。その例として、オプションとしてサポートする、米Aeronautical Radio(ARINC)社のデコーダ「ARINC 429 D」が挙げられる。LeCroy社の製品マーケティングマネジャを務めるBill Driver氏によると、このデコーダと同社のパッケージツール「MIL-STD-1553 TD」を組み合わせることで、軍事/航空向けの拡張が完成するという。同社は、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)と、同規格に関連するDigRFなど10以上の規格もサポートした。2010年8月には、I2C、SPI(Serial Peripheral Interface)、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、RS-232、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRayなどの規格を対象とした測定機能、データ抽出機能、グラフ化機能を実現する各種ツールから成るパッケージも発表された(写真2)。

多様な用途への対応

 LeCroy社のWaveRunnerなどが多くのシリアルバスオプションを提供することからは、ミッドレンジのオシロスコープには、多様な用途に適応することが求められていることがわかる。また、昨今のオシロスコープが備える柔軟性は、シリアルバスオプション以外の面にも表れている。LeCroy社のDriver氏は、「ミッドレンジのオシロスコープは、広い範囲の用途に適用可能な汎用テストツールとしても機能するものでなければならない」と述べる。例を挙げると、同社のミッドレンジのオシロスコープの場合、50Ωと1MΩで切り替え可能なフロントエンド終端を搭載している。1MΩの終端は、単純なパッシブプローブを使用し、ノイズや正確なタイミングについては考慮せずに信号の基本的な様子を把握したい場合に使用する。50Ω終端を使用するのは、シングルエンドのFETプローブやアクティブ差動プローブを用いて、非常に正確に信号波形を取得したい用途の場合である。

写真3「Infiniium9000シリーズ」
写真3「Infiniium9000シリーズ」 帯域が600MHz、1GHz、2.5GHz、4GHzのモデルがある。15インチ(約38cm)の液晶ディスプレイを備えており、奥行きは9インチ(約23cm)。

 Agilent社でオシロスコープグループのシニア製品マネジャを務めるJoel Woodward氏も「ミッドレンジのオシロスコープを選択する際には、柔軟性が重要な検討項目となる」と述べる。同社の場合、「Infiniium 9000シリーズ」として帯域が600MHz、1GHz、2.5GHz、4GHzの製品を用意することで、顧客がそれぞれの要件に見合った性能/価格のものを選択できるようにしている(写真3)。

 Infiniium 9000シリーズでは、デバッグ、プロトコルトリガー/デコード、ジッター解析、コンプライアンスの機能を実現するソフトウエアを選択して利用することができる。Agilent社は、I2C、SPI、RS-232/UART、CAN、LIN、FlexRay、USB、JTAG(Joint Test Action Group)、PCI(Peripheral Component Interconnect) Express、MIPI D-PHY、SATA(Serial Advanced Technology Attachment)、8b/10bの各プロトコルをサポートするプロトコルトリガー/デコード機能を提供している。

 Agilent社の場合、従来型のハードウエアトリガーと、同社が「InfiniiScan」と呼ぶソフトウエアベースのトリガーの両方をサポートする。ハードウエアベースのトリガーでは、広範囲にわたるトリガー条件をユーザーが選択し、あらかじめ定義しておくことが可能である。アナログトリガー、デジタルトリガー、プロトコルトリガーに対応可能であり、非常にまれに発生するイベントにも対処することができる。それに対し、「ソフトウエアベースのトリガーでは、ユーザーが視覚的にトリガーを定義することが可能だ。オシロスコープは、取得した各イベントのうち、トリガー条件に適合するものだけを表示する」(Woodward氏)という。また、ハードウエアトリガーとソフトウエアトリガーを“連結”し、複数段のトリガーを構成することも可能となっている。

 多くのデータポイントにわたって性能を検証したい場合には、デジタルトリガーまたはロジックトリガーが有効である。だが、「これらには、シグナルインテグリティの面でやや問題がある」(Tektronix社のシニア技術マーケティングマネジャを務めるChris Loberg氏)という。同氏は、「デジタルトリガーを使うことで検証にかかる時間を短縮できるケースはあるが、シグナルインテグリティについての検証を行う場合や、デバッグ中に信号の特性を詳細に調査する場合には、アナログイベントベースのトリガーが必須だ」と語る。その上で、Loberg氏は「アナログトリガーを、Tektronix社の『DPX』などが提供する高速波形表示機能と組み合わせると、デバッグ作業の効率は大幅に向上する」と付け加える。

 LeCroy社のDriver氏と同様に、Agilent社のWoodward氏も、柔軟なプローブオプションの重要性を強調する。「オシロスコープは、計測の対象とするシステムに接続しなければ使用できない。顧客は適切なプローブを選択するわけだが、後でプローブを変更できるようになっている必要がある」と同氏は述べる。Agilent社のInfiniium 9000シリーズの場合、シングルエンド、差動、高電圧、高電流といった多種多様なプローブを使用できる。「われわれは主要な顧客と協力し、何年もかけて顧客が抱えるプローブの問題の解決に取り組んできた。その結果として開発できたのが、一連のプローブオプションだ。2009年の1年間だけでも、当社は27種類以上のプローブを発表した」と同氏は説明する。

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