大衆車にも求められる「予防安全」:普及の鍵は、ミリ波レーダーの低価格化(2/7 ページ)
自動車の予防安全システムに用いられているセンサーのうち、事故回避に最も役立つものがミリ波レーダーである。この車載ミリ波レーダーについては、現在、大衆車にも広く搭載できるように低価格化を図るべく開発が進んでいる。本稿ではまず、車載ミリ波レーダーの特性や、使用されている周波数帯域に関する各国/地域の法規制について説明する。その上で、大手ティア1サプライヤや送受信ICを開発する半導体メーカーによる低価格化に向けた取り組みを紹介する。
77GHz帯と24GHz帯
現在、車載で用いられているミリ波レーダーとしては、送受信信号の周波数として77GHz帯を用いるものと、24GHz帯を用いるものが存在している。ただし、電波の定義において、ミリ波とは、波長が1mm〜10mmとなる30GHz〜300GHzの周波数を持つ電波のことであることから、24GHz帯のレーダーを準ミリ波レーダーとして区別することもある。
図1にミリ波レーダーを用いる予防安全システムの種類を示した。表2は各システムの用途、検出距離、使用されるミリ波レーダーの帯域をまとめたものである。長距離(50m〜200m)での検知を行う用途には77GHz帯のみが用いられており、中距離(20m〜50m)と近距離(〜20m)での検知を行う用途には77GHz帯も24GHz帯も用いられる。
ACCやプリクラッシュは、車間距離が長くなる高速走行時に前方の車両を検知する必要があるため、長距離の検知が可能な77GHz帯のミリ波レーダーを用いる。現在量産されているミリ波レーダーの多くは、ACCやプリクラッシュに用いる77GHz帯の製品である。
中距離/近距離での検知を行う予防安全システムは、ACCやプリクラッシュほどは普及していない。そうした中、トヨタ自動車は、中距離用のものとして、 77GHz帯のミリ波レーダーを用いたプリクラッシュを2種類実用化している。1つは2006年9月発表の「レクサス LS460」に採用されたもので、後続車両の接近を検知して、衝突の可能性が高い場合に乗員のむちうち被害を低減することを目的とする。もう1つは、前側方の車両を検知して交差点などでの出会い頭の衝突を避けるためのもので、2009年3月に発表された「クラウン マジェスタ」に適用した。
一方、24GHz帯のミリ波レーダーは、高速道路などで車線変更を行う際に変更先の車線の後続車両の有無を確認するシステムにおいて、後側方の車両を検知する用途に用いられている。例えば、2008年1月に発表されたマツダの「アテンザ」が搭載している「リアビークルモニタリングシステム」などがある。
近距離用については、低速走行時や駐車時に運転手の死角にいる歩行者などを検知するBSD(Blind Spot Detection)などに用いることが想定されている。ただし、現時点では、システムとして実用化された事例は少ない。
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