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大衆車にも求められる「予防安全」普及の鍵は、ミリ波レーダーの低価格化(3/7 ページ)

自動車の予防安全システムに用いられているセンサーのうち、事故回避に最も役立つものがミリ波レーダーである。この車載ミリ波レーダーについては、現在、大衆車にも広く搭載できるように低価格化を図るべく開発が進んでいる。本稿ではまず、車載ミリ波レーダーの特性や、使用されている周波数帯域に関する各国/地域の法規制について説明する。その上で、大手ティア1サプライヤや送受信ICを開発する半導体メーカーによる低価格化に向けた取り組みを紹介する。

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欧州は79GHz帯も割り当て

 車載ミリ波レーダーが使用できる周波数帯域は、国や地域によって個々に定められている。表3に、日本、米国、欧州のそれぞれにおいて車載ミリ波レーダーが利用可能な周波数帯域を示した。

 まず、77GHz帯については、日米欧すべてで利用が認められている。中距離〜近距離を検知する用途に利用されている24GHz帯については、ISM(産業/科学/医療)帯として知られる狭帯域(NB)の利用が、日米欧すべてで認められている。ただし、中距離〜近距離の車載ミリ波レーダーでは、小さなものでも検知できるように、より高い距離分解能が求められる。そのため、実用化されている24GHz帯のミリ波レーダーは、検知サイズの分解能を向上するのに最も効果的な超広帯域(UWB)を利用することが多い。

表3日米欧における車載ミリ波レーダーへの割り当て周波数帯域
表3 日米欧における車載ミリ波レーダーへの割り当て周波数帯域 

 しかし、24GHz帯のUWB利用に関する法規制は、日米欧で異なっている。欧州では、2013年6月までの時限利用が認められている。また、中距離〜近距離の車載ミリ波レーダー用の帯域として79GHz帯も割り当てられている。79GHz帯の車載利用には年限が設定されていないことから、最終的には 79GHz帯に一本化される可能性が高い。日本は、24GHz帯のUWBについては2016年末までの時限利用が認められているものの、ほかの通信機器との干渉を避けるために、利用可能な台数が限られている(許容普及率で0.1%)。一方、米国では、24GHz帯のUWBについて、車載利用に関する制限はほとんどない。

 日本と欧州で24GHz帯のUWBが時限利用で認められているのは、77GHz帯と比べて24GHz帯向けの送受信回路のコストが小さいからである。現行の77GHz帯のミリ波レーダーでは、GaAs(ガリウムヒ素)ベースの個別部品を用いて送受信回路を構成している。これに対して、24GHz帯のミリ波レーダーの送受信回路には、より低コストで済むSiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスを用いて集積化したICが適用されている。

 ただし、24GHz帯のUWBには、ほかの通信機器との干渉という問題が存在する。この問題を解決するために、欧州では、中距離〜近距離を検知する車載ミリ波レーダーの用途に79GHz帯が割り当てられたのである。

 しかし、79GHz帯を割り当てるだけでは、ミリ波レーダーのコストに関する問題は解決されない。そこで、77GHz帯のミリ波レーダー向けに開発が進んでいるSiGeプロセスを用いた送受信IC(後述)の技術を79GHz帯にも適用することにより、送受信回路のコストを24GHz帯のミリ波レーダーと同程度以下に抑えることも計画されている。具体的には、ドイツ政府が出資し、Daimler社、BMW社、Robert Bosch社、Continental社、Infineon Technologies社などのドイツ企業が参加する「RoCC(Radar on Chip for Cars)」というプロジェクトがある。同プロジェクトは、2009年〜2011年の3年間で、79GHz帯を用いる車載ミリ波レーダー向けに、低コストの送受信ICを開発する予定である。

 このような欧州の動きに合わせて、日本や米国でも79GHz帯の車載利用を検討する動きが活発化している。米国は、24GHz帯のUWBの車載利用に関する制限はない。しかし、2009年から、ITS(高度道路交通システム)向けの通信周波数帯域の割り当てで欧州と共同歩調を取る姿勢を見せ始めている。このため、79GHz帯を車載ミリ波レーダーの用途に割り当てる可能性は高い。日本でも、2009年から総務省が79GHz帯の車載利用に関する検討を開始している。

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