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大衆車にも求められる「予防安全」普及の鍵は、ミリ波レーダーの低価格化(6/7 ページ)

自動車の予防安全システムに用いられているセンサーのうち、事故回避に最も役立つものがミリ波レーダーである。この車載ミリ波レーダーについては、現在、大衆車にも広く搭載できるように低価格化を図るべく開発が進んでいる。本稿ではまず、車載ミリ波レーダーの特性や、使用されている周波数帯域に関する各国/地域の法規制について説明する。その上で、大手ティア1サプライヤや送受信ICを開発する半導体メーカーによる低価格化に向けた取り組みを紹介する。

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BiCMOSで集積度を高める

 一方、Freescale社が開発したSiGeプロセスは、バイポーラとCMOSの両方を利用できるBiCMOSプロセスである。0.18μmのCMOS プロセス「HiP6」をベースに開発したことから、プロセスの名称は「HiP6MW」となっている。同社は2010年11月から、複数の企業に対して、 HiP6MWを用いた77GHz帯ミリ波レーダーの送受信ICチップセットの試作サンプルを納入している。2012年末までに、同チップセットの量産品の開発を完了する計画である。


図3ミリ波レーダーの回路ブロック図(提供:フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン)
図3 ミリ波レーダーの回路ブロック図(提供:フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン) SiGeプロセスで製造したFreescale社の送受信ICチップセットを用いている。

 図3は、同社の試作サンプルを用いたミリ波レーダーの回路ブロック図である。送信は1チャンネル、受信は5チャンネルとなっている。また、ミリ波の送受信を行うRFフロントエンド回路は、送信と受信を別々のICで行っている。これは、送信回路と受信回路の間の絶縁(アイソレーション)を確保するためである。

 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのプロダクトマーケティング本部 RASG製品部でマネジャーを務める島田和昭氏は、「Freescale社のSiGeプロセスは、0.18μmのBiCMOSプロセスであることから、送信ICの内部に、変調器やPLLなどを集積することができる。また、複数の受信チャンネルが必要になるミリ波レーダーについても、受信ICの内部に、チャンネル数に対応するだけのミキサー回路とIF(中間周波数)アンプを集積して対応することができる」と述べる。

 SiGeプロセスを用いたミリ波レーダー送受信ICの製品化では、Infineon社がFreescale社に先行した。その理由としては、 Infineon社がBosch社向けに絞って製品開発を進めていたことが挙げられる。一方、Freescale社は、複数の顧客に対してSiGeプロセスを提案していたこともあって、製品化の時期でInfineon社に遅れをとった。しかし、「これまでの提案活動の甲斐もあって、多くの顧客に、集積度の面で優れるBiCMOSプロセスの利点を理解してもらえるようになった。現在、複数の顧客が採用に向けた評価を行っているのがその証拠だ」(島田氏)としている。

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