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ディスプレイ技術の止まらない進化LCDを追随する有機EL、電子ペーパー(2/5 ページ)

液晶ディスプレイは、旧来型のブラウン管を置き換えるものとして、広範な用途で主役の座を射止めた。そして、液晶ディスプレイは、現在も継続的に改善されている。しかしながら、有機ELディスプレイや電子ペーパーなども、少しずつではあるが用途を拡大しつつある。では、それぞれのディスプレイ技術には、どのような特徴があり、どのような進化を遂げているのだろうか。

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サブピクセルに工夫を施す

 上述したように多様な方式が登場したことによって、LCDでは、個々の画素の輝度を動的に調整できるようになり、純黒色と純白色、さらには濃淡の違う灰色も表現できるようになった。そして、LCDが白色のバックライト光源からカラーを表示するにはサブピクセル(副画素)が重要になる。例えば、従来の VGA(Video Graphics Array)パネルには30万7200個の画素がある。個々の画素は、赤、青、緑の3つのサブピクセルから構成される。サブピクセルを独立して制御することによって純色を作り出すことができる。さらに、ディザリングを行うことによって、見かけ上、表示できる色の範囲が増える。米Microsoft社が開発した、フォントを滑らかに表示する「ClearType」も、サブピクセルを利用した技術の1つだ。色の再現忠実度は犠牲になるが、画面上の文字は見やすくなる*1)

 図1(b)のように、サブピクセルには主にRGB(赤/緑/青)が使用されるが、これが唯一の形式というわけではない。米Nouvoyance社(旧米Clairvoyante社。2008年に韓国Samsung Electronics社に買収され、現在は同社の子会社となっている)は、さまざまな用途で利用可能なものとして「PenTile」と呼ばれる技術を開発した(図1(c))。この技術は、RGBG(赤/緑/青/緑)形式をベースとする。初期のPentileでは、5点形(サイコロの5の目のような配置)をしたセルを使用していた。

 米Eastman Kodak社の伝統的なBayer方式のイメージセンサー(Bayerという名称は、1976年に同技術の特許を取得したBryce E Bayer博士に由来する)は、Nuovoyance社のPenTileと同じRGBG形式である。RGBG形式は、人間の視覚は緑色スペクトルに最も敏感であるという事実を利用する。同形式を用いたPenTileは、サブピクセルの数が従来のRGB形式の2/3となっている。しかし、この技術を開発した Candice H Brown Elliott氏は、「PenTileの解像度は従来のRGBディスプレイの解像度と同等だ」と主張する。PenTileは、現在、Samsung社の携帯電話機やデジタルカメラなど、民生用機器向けの有機ELパネルに使用されている。

 このほかにもRGBW(赤/緑/青/白)形式がある。同形式では、ある一定の消費電力においてディスプレイの輝度を最大化することができる。

 シャープは、将来の生き残りをかけて、韓国や台湾、中国の競合メーカーと技術面での差異化を図ろうと奮闘している。同社は、2009年に米テキサス州サンアントニオで開催された『SID(Society for Information Display)』で、従来の赤、緑、青の加法混色だけではなく、減法混色のシアンとマゼンタを加えた5つのサブピクセルを使用するLCDの試作品を発表した。さらに、その6カ月後の2010年1月に開催された『CES(Consumer Electronics Show)』において、シャープはRGBY(赤/緑/青/黄)の4原色技術である「クアトロン」を採用した40〜68インチ型のテレビを発表している。一部の機種はすでに生産中であり、ほかの機種も2011年に生産を開始する予定だという。

 シャープはクアトロンについて、「RGBYのサブピクセルの組み合わせは、従来のRGB形式の数十億色に対し、1兆色以上の色を表示できる」と主張している。また、「人間が裸眼で識別できるほぼすべての色を忠実に再現し、金貨などの金色やヒマワリの黄色、楽器などの金属色、エメラルドグリーンの海、空の青なども、より鮮やかに再現できる」としている*2)。ただし、同社は、パナソニックが1970年代に同様のコンセプトでブラウン管テレビを製造するも、市場からの反応が薄く、すぐに製造を中止したことについては言及するのを避けていた。また、シャープは、「RGBサブピクセルのみを利用したコンテンツの画質が、なぜRGBYディスプレイによって向上するのか」という質問に対する確固とした答えを持っていないようだ。しかし、シャープが重要なものに目を付けたと感じた企業が少なくとも1社ある。それがApple社だ。同社は、クアトロンから1歩進んだ、減法混色の1種であるCMYK(シアン/マゼンタ/イエロー/ブラック)方式のディスプレイ技術に関する特許を申請している*3)


脚注

※1…Dipert, Brian, "Display technology's results are compelling, but legacy is un 'clear'," EDN, Oct 26, 2000, p.63

※2…Carnoy, David, "Sharp intros industry first four-color pixels," CNET, Jan 6, 2010, http://ces.cnet.com/8301-31045_1-10426897-269.html

※3…Foresman, Chris, "Apple CMY display design could be boon for print production," Ars Technica, http://arstechnica.com/apple/news/2010/04/apple-cmyk-display-design-could-be-boon-for-print-production.ars


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