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ディスプレイ技術の止まらない進化LCDを追随する有機EL、電子ペーパー(3/5 ページ)

液晶ディスプレイは、旧来型のブラウン管を置き換えるものとして、広範な用途で主役の座を射止めた。そして、液晶ディスプレイは、現在も継続的に改善されている。しかしながら、有機ELディスプレイや電子ペーパーなども、少しずつではあるが用途を拡大しつつある。では、それぞれのディスプレイ技術には、どのような特徴があり、どのような進化を遂げているのだろうか。

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解像度とアスペクト比

 最近の薄型テレビは、画面の大きさに関係なく、ワイド画面がサポートする画素数1920×1080の1080pを採用する傾向がある。 

 Samsung社は、2010年に韓国で開かれたある会合において、解像度の上限に関する懸念事項を示した。ますます大型化する画面をかなり近い距離で見るようになると、不連続な画素や画素間の境界といった、見えなくてもよいものがよく見えるようになるだろうというものである。

 現在、映画館では、解像度が2K(垂直方向の画素数が2048)および4K(同4096)のデジタル映画を上映しているが、民生用機器向けのメディアで 2Kや4Kの解像度をサポートできるものはほとんどないと言ってよい。ただし、ダウンロード方式のメディアストリーミングはもっと柔軟なようだ*4)。また、NHKもこの数年間、CESにおいて注目度の高いスーパーハイビジョン(SHV:Super High Vision)、UHDTV(Ultra High Definition Television)のデモを行っている。とはいえ、スーパーハイビジョンを広く市場に展開できるかどうかは、はっきりしないままである。

 高解像度化は、テレビよりもパソコンディスプレイで進みやすいと思う方もいるかもしれない。その見解は正しいが、実は高解像度のパソコン用モニターはそれほど普及していないというのも事実である。確かにパソコンのモニターは目の前に置かれるため、高解像度、高精細であることが求められる。解像度や精細度が低くても、パソコンのモニターはテレビよりも画面が小さいので、その問題は多少は相殺できる。ただし、写真や文字などのコンテンツは精細度の影響を受けやすい。従来のアナログVGAや、シングルリンクDVI(Digital Visual Interface)、HDMI(High Definition Multimedia Interface)で接続した場合、表示品質の向上はある程度までに制限されてしまう。これらに比べて、DisplayPortでは制限が緩和されることから、一定の成功を収めている*5)

 LCDの製造は、以前ほど難易度は高くなくなった。そのため、ある程度の大きさで、解像度がそれほど高くないディスプレイの生産量が増大し、低価格化が進んだ。その結果、品質と価格の兼ね合いが考慮されるようになり、高解像度ディスプレイは、利益率は高いが生産量は少ないニッチな市場へと追いやられることとなった。また、過去のOSをはじめとするソフトウエアにおけるdpi(Dot per Inch)についての制限も無視できない要素となっている。Microsoft社の「Windows 7」のように、dpiに柔軟に対応できる最新のOSを利用する場合ですら、かつてのコンピュータディスプレイの標準的な解像度(画素密度)とされる 72dpiのフォントや図形を高解像度のディスプレイで表示すると、小さすぎたりぼやけたりして、非常に見にくくなってしまうのである。

写真2 Retinaディスプレイの解像度
写真2 Retinaディスプレイの解像度 Retinaディスプレイ(a)には、同じ寸法の従来のLCD(b)の4倍の画素が含まれている。

 幸い、こうしたことは、最近のモバイルOSやアプリケーションではほとんど問題にならない。携帯電話機やマルチメディアプレーヤ、カメラなどは超小型ディスプレイを搭載するので、システムのハードウエアとソフトウエアで効果的に画素密度を高くして、ユーザーの知覚品質を大幅に高めている。例えば、 Apple社はLG Display社と提携してRetinaディスプレイを商用化し、「iPhone 4」に搭載した(写真2)。同ディスプレイは、前世代機種の「iPhone 3GS」が採用していた従来のLCD技術とは異なるIPS方式を用いている。それだけではなく、ディスプレイのサイズは3.5インチとiPhone 3GSと同じのままで、解像度を4倍に高めている。1ピクセルの幅を78μmに小型化することで、画素数を960×640に増やし、 326ppi(Pixel per Inch)の解像度を実現したのだ。なお、iPhone 3GSのディスプレイの画素数は480×320だった。

 このほか、日立が、画面のサイズがRetinaディスプレイの約2倍となる6.6インチであるにもかかわらず、画素密度が302ppiのディスプレイを発表したり、カシオ計算機と凸版印刷の合弁会社であるオルタステクノロジーが、画素数1920×1080、画素密度458ppiの4.8インチ型ディスプレイを発表したりするなど、小型ディスプレイの分野でも高解像度化が進んでいる。

 解像度だけでなく、アスペクト比にも変化が見られる。テレビやパソコンディスプレイのアスペクト比は、ワイド画面形式のテレビ番組や映画、ビデオコンテンツの数が増えていることを受けて、この数年間に、現在主流の16:9または同程度の比率への移行が進んだ。コンピュータゲームの愛好者や株式投資家、そのほかのパワーユーザーの中には、複数のディスプレイを横に並べて、水平方向の寸法をさらに延ばしている人もいる。しかし、単にウェブサイトを閲覧したり、文書を作成したり、表計算を行ったりしている多くのパソコンユーザーは、アスペクト比がこれまでの4:3からワイド画面になったことで、垂直方向の解像度が失われてしまったように感じる場合もあるだろう*6)*7)

 一方、携帯型電子機器のディスプレイは、少なくとも今のところはワイド画面に移行することなく、4:3のまま大型化する道をたどっている。同じアスペクト比を維持する理由として、アスペクト比が4:3の縦長のディスプレイを搭載した機器は、ユーザーの手にうまく収まるということがある。また、ユーザーが携帯型機器でアクセスするコンテンツの大半は、ワイド画面ではないほうが見やすいという理由もある。Apple社は、iPadのディスプレイのアスペクト比が4:3であることに対して初期ユーザーから数多くの不当な批判を受けた。しかし、これはクレームをつけたユーザーが動画/映像を再生するという目的にしか目を向けていなかったからだ。iPadは電子書籍リーダーとしての用途も兼ね備えている。彼らは、電子書籍を縦長で1ページ表示する場合にも、横長に2 ページ表示する場合にも、アスペクト比が4:3に近いものになるという事実を見落としていたのである。


脚注

※4…『Blu-rayの蹉跌』(Brian Dipert、EDN Japan 2010年11月号、p.30)

※5…『ビデオインターフェース最前線』(Brian Dipert、EDN Japan 2007年3月号、p.42)

※6…"HDTV Has Ruined the LCD Market," Slashdot, http://hardware.slashdot.org/story/10/04/ 23/0012218/HDTV-Has-Ruined-the-LCD-Market

※7…"Why Are We Losing Vertical Pixels?" Slashdot, http://hardware.slashdot.org/story/10/10/ 06/1522206/Why-Are-We-Losing-Vertical-Pixels


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