新日本無線のアナログマスタースライス、SILVACOと組んで設計期間を半減:新日本無線 アナログIC製造サービス
アナログICをセミカスタムで開発する企業に向けて新日本無線が2011年5月から提供しているマスタースライスサービスでは、ユーザー企業からレイアウト設計の時間短縮を望む声が上がっていたという。今回、それに応えた格好だ。レイアウト設計の所要期間を半分にできると説明する。
アナログ半導体メーカーの新日本無線とEDAツールベンダーのSILVACO(シルバコ)は、新日本無線が提供するマスタースライス方式のカスタムアナログIC製造サービス(アナログマスタースライス)の設計期間短縮を狙った専用の設計環境を共同で開発し、提供を開始した。2012年1月26日に両社が共同で発表した。レイアウト設計の所要期間を、従来の半分まで短縮したという。
新日本無線のアナログマスタースライスは、ユーザーがカスタム仕様のアナログICを比較的容易に開発して入手できるサービスだ。新日本無線はあらかじめ、トランジスタや抵抗、コンデンサなどの基本素子を形成したウエハー(マスタースライス)をあらかじめ製造しておく。そしてユーザーは、それらの素子の結線だけをカスタマイズすることで、独自の機能のアナログICを実現する。具体的にはユーザーは、結線を定義する配線層のレイアウトを独自に設計し、そのデータを新日本無線に引き渡す。いわば、ゲートアレイ方式のデジタルASICのアナログIC版といったサービスだ。新日本無線は2011年5月からこのサービスを提供している(参考記事)。
同サービスは、上述の通り汎用のマスタースライスを使うセミカスタム開発になるため、フルカスタム開発に比べて設計自由度は低くなるものの、製造期間が短く、試作や少ロット生産などに使いやすいというメリットがある。ただし両社によると、デザインハウスなどのユーザーは、「レイアウト設計段階の時間短縮や、設計手法の改善を長く望んでいた」という。
共同開発したアナログマスタースライス専用設計環境は、SILVACOがIC設計向けに提供しているレイアウトエディタ「Expert」をベースにしたものだ。SILVACOの日本法人であるシルバコ・ジャパンによると、フルカスタムのアナログICの設計でレイアウト作業の効率を高めるのに広く利用されている「Schematic Driven Layout(SDL)」を、アナログマスタースライスの開発でも適用できるように改善したという。加えて、アナログマスタースライスでも階層設計に対応できるようにした。これらの結果、レイアウト設計に要する所要時間を前述の通り半分に短縮できたと説明している。
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