「壊れない電子部品」という迷信:Wired, Weird(2/3 ページ)
フォトカプラは、初期不良と経年劣化以外の要因で不具合を起こすことがないと信じられている。しかし筆者は、この“壊れるはずがない電子部品”に起因する製品の不具合を何度か体験している。最近になって、その不具合発生プロセスを解明できたので紹介しよう。
LEDチップの剥離
図2は、不具合が発生したフォトカプラの断面形状である。左側にある緑色で示した小さな四角がLEDチップ、右側の黄色で示した大きめの四角がフォトトランジスタである。
「想定外の驚くべきこと」とは、リードフレームにダイボンディングで接着されているはずのLEDチップの剥離である。フォトカプラのLEDチップは1mm角未満の小さなサイズで、リードフレーム上にダイボンディングによって固定されていた。ダイボンディングのボンディング材料は、銀ペーストなどの材料を過熱/圧接してチップをリードフレームに搭載してから、エポキシ化して接着されている。エポキシ樹脂で接着したLEDチップは生半可なことでは剥離しないはずである。にもかかわらず、LEDチップは剥離していたのだ。
なお、フォトカプラに不具合が発生した基板は1枚だけではなかった。同時期に製造された基板について、多くのフォトカプラに起因する不具合が発生した。また、不具合が発生したフォトカプラは製造ロットが同一だった。これらの不良部品を、メーカーに返却して調査を依頼するとともに、不具合が発生した基板を詳細に分析した。その結果、不具合が発生するフォトカプラについて、基板上の実装位置に共通点が見つかった。図3にフォトカプラの実装の向きと不具合発生の関係を示す。
フォトカプラの表面の○印がある側にLEDチップが、○印の無い側にフォトトランジスタが組み込まれている。図3においてLEDチップのある側を上向きに実装したものは不具合が多く発生し、下向きに実装したものは不具合が発生しなかった。
その後、フォトカプラメーカーからの調査結果が届いたが、やはり不具合の原因はLEDチップの剥離にあるという結果だった。問題解決の鍵は、LEDチップが剥離するプロセスの解明にあった。フォトカプラの製造工程を確認するなどして、メーカーと共同で原因を究明したものの、成果は得られなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.