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重要3大部品の1つ、 コンデンサのルーツと基本機能よく分かる! コンデンサの仕組みと働き(1)(2/3 ページ)

本連載は、TDKホームページのテクマグ「コンデンサ・ワールド」から抜粋・再構成したものです。電子回路の基本を構成するコンデンサについて、その仕組みと働きを全3回シリーズで解説します。

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 電気現象を担う実体を電荷といい、プラスの電気の場合は正電荷、マイナスの電気の場合は負電荷といいます。電子は負電荷を持つ素粒子で、2種の物質を摩擦し合うと、片方の物質は電子が引きはがされてプラスに帯電し、もう片方は電子を受け取ってマイナスに帯電します。

 摩擦によって正負のどちらに帯電するかは、摩擦する物質の組み合わせによって変わってきます。これを一覧表としてまとめたものが帯電序列と呼ばれるものです。ただし、帯電序列は条件によって微妙に変わるものなので、必ずしも厳密なものではなく、大まかな目安と考えてください。摩擦電気というのは日常的な現象ですが、ミクロ的にはいまだに未解明な謎も残しているのです。

図5 主な物質の摩擦帯電系列
図5 主な物質の摩擦帯電系列

「電荷を蓄える」「直流を通さず、交流を通す」がコンデンサの基本機能

 コンデンサがため込める電荷の量のことを静電容量あるいは電気容量といいます(単に容量とも呼ばれます)。コンデンサが英語圏ではキャパシタと呼ばれるのも、静電容量(キャパシタンス)からきた用語です。

 コンデンサの静電容量は向かい合った電極板の面積に比例し、電極間の距離に反比例します。つまり電極板の面積を広くするほど、電極間距離を狭くするほど静電容量も大きくなります。また、電極間に挿入する誘電体(絶縁物質)の種類によっても、静電容量は大きく変わります。

図6 コンデンサの静電容量
図6 コンデンサの静電容量

 これは比誘電率という数値で表されます。空気の比誘電率は約1ですが、マイカ(雲母)やプラスチックでは2〜8、セラミックスの誘電体では10〜20000にも及びます。比誘電率が高いほど小型でも静電容量の大きなコンデンサが作れます。このため電子機器にセラミックコンデンサが多用されるようになったのです。

 電極の大面積化をコンパクトに実現するには、大きく2つの方法があります。1つは誘電体を挟んだ2枚の電極を巻物のようにくるくると巻く方法です。その代表がアルミ電解コンデンサやフィルムコンデンサです。もう1つは電極板と誘電体をサンドイッチのように交互に多層積層する方法です。こちらの代表が積層セラミックチップコンデンサで、薄いセラミックスシートの上に金属電極を印刷し、これを数百層から1000層以上にも積層し、チップ状に小さく切断してから焼成して製造されます。小型化のみならず量産化にも適した方法です。

図7 コンデンサのコンパクトな大容量化の2方式
図7 コンデンサのコンパクトな大容量化の2方式

 コンデンサは摩擦電気を蓄える装置がルーツであるように、「電荷を蓄える」という基本機能があります。18世紀末に電池が発明されてからは、電圧を加えることによってもコンデンサは電荷を蓄えられることが発見されました。また、コンデンサには「直流を通さず、交流を通す」という、もう1つの基本機能があります。電極間は誘電体(絶縁体)が挿入されているので直流電流は遮断しますが、交流電流は通します。それも周波数が高い交流ほど通しやすくなります。これについては次回で詳しく取り扱うことにして、まずは「電荷を蓄える」という機能を中心にご説明いたします。

カメラのストロボとACアダプタにおけるコンデンサの役割

 コンデンサに電池をつないで充電してから、2枚の電極をショートさせると(導線で結ぶと)、瞬間的に放電してしまいます。このコンデンサの充放電の実例として、最も分かりやすいのはカメラのストロボ発光回路です。

図8 使い切りカメラのストロボ発光回路とコンデンサ
図8 使い切りカメラのストロボ発光回路とコンデンサ

 ストロボのキセノンランプを発光させるのには高い電圧が必要です。しかし、電池の電圧は数ボルトしかないので、これを簡易なDC-DCコンバータ(直流電力の変換回路)で昇圧し、大容量の電解コンデンサにエネルギーを蓄えます。シャッターボタンを押すとトリガー(引き金という意味)回路が作動し、エネルギーが瞬間的に放出されてキセノンランプが発光するとともに、再びコンデンサに充電されます。

 コンデンサの充放電は交流を直流に変換する電源回路にも不可欠なものです。例えば携帯電話のACアダプタは、コンセントの100Vの交流を5V程度の低い電圧の直流に変換し、携帯電話に内蔵されたバッテリを充電します。

 従来、ACアダプタというと、ズングリと重いタイプのものが主流でした(電動工具のバッテリチャージャなどとしても使われています)。こちらの方が回路が簡単で、原理も理解しやすいので、それを例に電源回路におけるコンデンサの働きをご説明します。

図9 ACアダプタ(簡易タイプ)の平滑回路とコンデンサ
図9 ACアダプタ(簡易タイプ)の平滑回路とコンデンサ

 このタイプのACアダプタが重いのは、鉄心の電源トランスを用いているからです。この電源トランスでまず100Vの交流を低い電圧の交流に変換してから、ダイオードで整流します。ダイオードは電流を一方向にのみ流す半導体素子です。しかし、整流したとはいっても、この段階ではまだ交流(サイン波)の名残を持った脈流です。

 この脈流をなだらかにするのが平滑回路のコンデンサです。コンデンサが充放電を繰り返すことで、ほぼ一定電圧の直流が得られます。これは、例えていえば家計のやりくりのようなものです。収入が多いときは貯蓄に回し、収入が少なくなったときは貯蓄を切り崩し、日々の暮らしを安定に保ちます。

 当然ながら貯蓄が多いほど安定するので、一般に、このコンデンサには大容量のアルミ電解コンデンサが使われます。なお近年、携帯電話などのACアダプタが小さく軽くなったのは、従来タイプと異なる方式(スイッチング方式)が採用され、トランスもコンデンサも小さいもので済むようになったからです。

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