電子回路で多様な活躍、 交流を通すコンデンサの機能:よく分かる! コンデンサの仕組みと働き(2)(3/3 ページ)
コンデンサは、2枚の電極板が向かい合った構造になっています。絶縁体(空気や誘電体)によって隔てられているので、コンデンサは直流を遮断するのは理解できますが、それではなぜ交流を通すことができるのでしょうか?
コンデンサはノイズ対策にも不可欠な部品
一般にノイズと呼ばれるのはさまざまな周波数の交流の集まりであり、ノイズ除去にも交流を通過させるコンデンサが重要な働きをしています。例えば、蛍光灯のスイッチを入れたり、冷蔵庫のコンプレッサが作動すると、ラジオに雑音が入ることがあります。
スイッチングというのは急激な電流変化が起きることであり、前述したように急激な電流変化は電磁波を生み、それがケーブルなどを通じて電子機器に侵入してくるのです。
同様に電子回路で電流の向きを高速で切り替えるトランジスタや、交流電流を一方向の電流に整流するダイオードなどからもノイズが発生します。このノイズを除去するための簡便で効果的な回路として組み込まれるのが、コンデンサ(C)と抵抗(R)をつないだCRスナバ回路です。
電流のON/OFFの際には、急激な電圧上昇で、スパイクノイズと呼ばれる高周波ノイズが信号電流に重畳します。CRスナバ回路はこのスパイクノイズを除去して、トランジスタやダイオードを保護するもので、中・高耐圧タイプのコンデンサが用いられます。
電子機器の高周波化に伴って、コンデンサには低ESL特性が求められています。ESLとは等価直列インダクタンスの略語です。高周波領域では配線路やリード線まで、回路図に現れないインダクタ成分(コイル成分)として影響を及ぼし始めます。
リード線のない積層セラミックチップコンデンサは高周波特性に優れるのが特長ですが、それでも内部電極や端子電極の持つインダクタ成分の影響が無視できなくなります。というのも、このインダクタ成分はコンデンサとともに共振回路を作るからです。その周波数を自己共振周波数といい、その周波数以上ではコンデンサとして機能できなくなります。
そこで、高周波化が進むICなどには、できるだけ低ESLのコンデンサが使われるようになっています。図10に示すのは低ESLタイプのコンデンサ例です。フリップタイプ、3端子貫通コンデンサは電流ルートをできるだけ短くして低ESL化を図っています。
また、ULIコンデンサは、電流の流れる方向を交互にして発生磁界を相殺する超低ESLタイプです。積層セラミックチップコンデンサにも多種多様なタイプがあり、用途に応じて使い分けられています。
次回は、驚異的な小型化を成し遂げ、電子機器の小型・軽量・薄型化に貢献してきた積層セラミックチップコンデンサの製造技術を中心にご紹介します。
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