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計測面からのぞくSerial ATAの高速化技術高速シリアル・インターフェイス入門(3)(2/2 ページ)

今回は、純粋なシリアル・インターフェイスであるSerial ATA(SATA)を取り上げます。パソコン内部のハードディスクの配線を簡素化/高速化するために、ATAをシリアルに置き換えることが目的だったSATAは、その用途が拡張しています。

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・アイパターン

 一般的に、シリアル・インターフェイスの信号評価ではアイパターンが用いられています。SATAもRevision 1.0aでは、アイパターン計測に対するマスクが規定されていましたが、SATA II以降はアイパターンによる評価が行われなくなりました。アイパターンで評価を行う代わりに、後述するコンプライアンス・パターンを用いて、最大振幅や最小振幅、ジッタなどを個別にパラメータを用いて計測をします。

 特徴的なのは、このパラメータ計測に統計的な計算を導入していることです。特に最大振幅では、規定が電圧値ではなく、規定の電圧を超える頻度によって規定されていることでしょう。しかし、Gen3では再び最小振幅の計測にアイパターンの使用が規定されています。

 図5は、アイパターンを利用して最小振幅の計測を行っているものです。計測値は586.1mVで、240mV以上であることとする規格を満足しています。

図5 SATA Gen3のアイパターン
図5 SATA Gen3のアイパターン

・伝送線路

 パラレル・インターフェイスであるATAでは、マスターとスレーブの2台のドライブをデイジーチェーンで接続し、ホストからドライブへの信号もドライブからホストへの信号も同じデータ線を用いる双方向の半二重通信のバス構造を取っていました。前回の「あらためて学ぶ、DDR2の高速化技術」で解説したように、信号線が分岐するバス構造では分岐点で起きる反射を抑える手法を考えなければなりません。

 しかしながら、シリアル・インターフェイスであるSATAの場合は、ピアーツーピアの接続になっているため、2台のドライブに対してそれぞれ個別にケーブルで接続するようになっているだけでなく、ホストからドライブ、ドライブからホストの個々の方向に専用の差動信号ペアが割り当てられている全二重通信となっていて、信号線の分岐を考慮することなく伝送線設計が簡略化されます。

 また、ドライブからホストへデータ転送しながら同時にホストからドライブにデータ転送が行えるので、ピークのデータ転送速度が2倍になります。信号品質の評価においては、前回のDDR2のように書き込みと読み込みの信号を分離する特別な手法を必要としません。Gen3では、6Gbpsと信号転送速度が非常に高速になっているので、伝送路による信号の劣化が無視できなくなっているため、CIC (Compliance Interconnect Channel)と呼ばれるリファレンス・チャンネルを使い、このリファレンス・チャンネルで劣化した後の信号の評価を行うことが盛り込まれています。

・テスト・フィクスチャ

 信号品質の評価にオシロスコープが用いられますが、広帯域のオシロスコープの入力は一般的にはSMAコネクタになっているので、SATAのコネクタに直接つなぐことができません。そこで、SATAのコネクタとSMAコネクタのアダプタを用意して信号のピックアップをします。このアダプタをテスト・フィクスチャと呼びます。

 図6にはレクロイの提供するテスト・フィクスチャの外観を示しました。ハードディスクのSATAコネクタにテスト・フィクスチャを接続し、テスト・フィクスチャとオシロスコープとはSMAで接続します。

図6 SATAのテスト・フィクスチャを使ってオシロスコープと接続されたハードディスク
図6 SATAのテスト・フィクスチャを使ってオシロスコープと接続されたハードディスク

・コンプライアンス試験

 SATA-IO(The Serial ATA International Organization)では、Unified Testと呼ばれる標準試験仕様を制定し、その仕様に従った試験を実施するInteroperability Workshopを年2回米国で開催しています。ここで実施されるコンプライアンス試験および相互接続性試験に合格した機器は、SATA-IOのWeb-Site上のIntegrator Listに掲載されます。

 計測器に関しては、試験仕様として現在UTD(Unified Test Document)1.4がリリースされていますが、各計測器メーカーは、このUTD1.4に従った試験方法をまとめ、MOI(Methodology Of Implementation)と呼ばれるドキュメントとして実際の試験を実施します。その測定結果を含めてSATA-IOが評価をし、承認が得られたものはSATA-IOのWeb-siteに掲載されます。

 測定項目が多岐にわたっているので、自動化されたコンプライアンス試験パッケージも用意されています。図7はレクロイの計測器を使用した例で、Startボタンを押すだけで試験の実施とレポートの作成が簡単に行えます。

図7 SATAのコンプライアンス試験プログラムの例
図7 SATAのコンプライアンス試験プログラムの例

コンプライアンス・パターン

 上記のコンプライアンス試験では、データ・パターンを特定しなければ測定結果の再現性が確保できないために、使用するデータ・パターンを規定しています。図8にはHFTP(High Frequency Test Pattern:左上)、MFTP(Mid Frequency Test Pattern:右上)、LFTP(Low Frequency Test Pattern:左下)、LBP(Lone-Bit Pattern:右下)の4つのテスト・パターンの波形を並べて表示しています。一般的にはハードディスクなどのデバイスには、こうしたテスト・パターンを送出するBIST (Built-In Self Test)と呼ばれるテスト・モードが用意されています。

図8 コンプライアンス試験時の波形
図8 コンプライアンス試験時の波形

 今回は、SATAの概要とその計測例をいくつか示しました。次回は、PCI Expressを取り上げます。ここで示した技術課題と基本的には同じものがありますが、PCI Express特有の評価技術などもありますので、今回の復習に加えて紹介したいと思います。

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