知っておきたいLED照明の基礎:いまさら聞けない次世代照明技術(2/3 ページ)
有機EL照明とともに、低消費電力の照明として注目を集めているのがLED照明です。最近は駅や大型施設などにもLED照明の採用が進み、価格もずいぶんリーズナブルになってきました。今回は、LED照明の仕組みを解説します。
白色LEDの寿命の定義
LEDは半導体そのものが発光するという特性上、白熱灯のようにフィラメントが切れて点灯しなくなることはありません。しかし、LEDチップやチップを封止している樹脂などの素材が劣化することにより、使用とともに明るさが徐々に低下します(光束減退)。
LED照明器具に使用されている白色LEDの寿命は、光束減退により光束維持率が70%に低下するまでの時間と定義されています(カラー演出用途や表示用途の場合は、この限りではありません)。なお、LEDに使用されている樹脂の劣化は、使用温度が高いほど加速されるため、同じLEDを用いた器具でも、LEDの使用条件によって寿命は異なります。
白色LEDの発光効率について
白色LEDは1996年に実用化されてから以降、毎年、発光効率(lm/W)が向上しており、今後もさらなる効率の向上が見込まれています。図6にLED照明推進協議会(JLEDS)が2008年4月に公開した白色LEDの発光効率のロードマップを示します。このロードマップによれば、高効率な白色LEDはすでに100lm/Wの発光効率を有しており、2010年ごろには130lm/Wに達すると予測されています。
それに対して、照明に使用されている一般的な白熱灯の発光効率が約13〜15lm/W、電球形蛍光灯の発光効率が約60lm/W、オフィスや住宅の全般照明用器具に搭載されている蛍光灯の発光効率が約80〜110lm/W程度であることから、LEDの発光効率はすでに蛍光灯レベルに達しているといわれるケースも少なくありません。しかし、これはLED素子単体の話であって、LEDを器具に組み込んで使用する場合には注意が必要です。
図6のロードマップも含め、LED素子単体の発光効率は、一般的にLEDの温度が25℃の場合における発光効率の値が用いられています。LED素子を器具に組み込んで使用する場合、当然のことながらLED自身の発熱によってLEDの温度は周囲温度(25℃程度)よりも高い温度となります。
LEDは、一般的に高温で使用するほど発光効率が低下するため、器具組み込み時のLEDの発光効率は25℃における値よりも低下します。それ以外にも電源回路部での電力損失や器具内部での光ロスなどにより、結果的に器具全体の発光効率はかねがねLED素子単体の効率の約70%〜半分程度まで低下してしまうのが実情です。
従って、LED照明器具と従来光源を搭載した器具との効率の比較を行う際には、光源を器具に組み込んだ状態での効率で比較することが必要です。器具全体での効率は一般的に「総合効率=器具光束(lm)÷消費電力(W)」で評価されます。
図7は、LED照明器具の総合効率(今後の予測も含む)を既存の照明器具の総合効率と比較したものです。これによれば、現状のLED照明器具は、白熱灯器具やコンパクト形蛍光灯器具などに比べて省エネを実現することが可能ですが、執務室などの主照明として使用されているHf形蛍光灯器具並みの効率に達するには、まだ数年かかると見込まれています。
LED照明器具で、近年急速に普及が進んでいる分野の代表的なものはダウンライトです。LEDダウンライトの中には、白熱灯だけではなく、蛍光灯ダウンライトに比べても省エネが訴求できるレベルのものが登場しています。よって次ページでは、LEDダウンライトの現状について解説します。
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