ハード志向のモノづくり復権へ、新奇な設計手法を提案する:Wired, Weird(2/3 ページ)
電子システムの設計といえば、かつてはハードが中心だった。設計作業の重点は、回路基板そのものにあった。今ではマイコンやFPGAの活用が進み、すっかりソフト志向になっている。PC上でファームやロジックを設計し、デバッグまで完結する。非常に便利だ。半面、モノづくりの実感を持てる機会が減ってはいないだろうか。
防犯装置を2端子部品だけで構成
ここからは、幾つかの事例を示しながら、2端子機能部品の具体的な使い方を説明していく。1つ目の事例は簡易な防犯装置だ(図2)。2端子機能部品として用意した発振器を使う。この防犯装置は、センサーが異常を検知していない正常時には緑色のLEDを点灯させておき、異常を検知したら赤色のLEDを点滅させる機能を備える。
図2 簡易的な防犯装置 正常時は緑色LED(D1)が点灯し、異常検知時は赤色LED(D2)が点滅する。使用部品は、「発振器」の他、抵抗やダイオードなど、全てが2端子機能部品である。(クリックで画像を拡大)
ご覧の通り、この回路で使っているのは全てが2端子機能部品である。しかも、発振器を除けば、LEDに抵抗、スイッチと、いずれも一般的な電子部品だ。
それでは簡単に動作を説明しよう。この回路では、スイッチ(SW1)をセンサーに見立てている。センサーが異常を検知していない正常時はSW1の接点が閉じており、異常を検知すると接点が開くものとした。
正常時は、電源である電池から供給される電流が[ノーマル通知用の緑色LED(D1)]→[SW1]→[抵抗(R1)]と流れ、緑色LEDが点灯している。この時、発振器にかかる電圧は低く、従って発振器は動作しない。異常時はSW1が開き、電池から供給される電流は[アラーム通知用の赤色LED(D2)]→[発振器]→[R1]と流れ、赤色LEDが点滅する。赤色LEDの点滅の周期は、発振器が内蔵する抵抗とコンデンサの値で決まる。周期が0.5秒、1秒、2秒といった具合に異なる発振器を準備しておけばよいだろう。
一定期間動作を継続させるタイマー
次はタイマーの応用例である(図3)。この2端子機能部品は、人感センサーと組み合わせる使い方が有効だ。ここでは、市販のセンサーライトのように、対象物を感知したら2分間にわたってLEDを点灯させる回路を作ってみた。
この回路の動作を簡単に説明しよう。センサー(SW1)が動作すると接点が閉じて、タイマーにトリガーがかかる。するとタイマーは、所定の期間にわたってオン出力を継続する。センサーが短時間でオフになって接点が開いても、タイマーは所定の期間はずっとオンのままであり、その間LED(D1)は点灯し続ける。タイマーの動作期間は、内蔵の抵抗とコンデンサの値によって設定でき、30秒、1分、2分、3分などのバリエーションを用意しておく。
この回路は、赤外線の変化を捉えて短時間だけオン状態の信号を出力するようなセンサーを用いる際に、表示回路として最適である。その他、ドアセンサーの信号を受けて、室内のライトを長時間点灯させる回路にも応用がきく。タイマーと発振器を直列につなげば、LEDを所定期間だけ点滅させるように機能を変えることも可能だ。
ラッチを使って回路の動作を保持
続いてはラッチだ(図4)。これもタイマーと同様に、短時間しかオン状態を維持しないタイプのセンサーと組み合わせて、その出力を保持するために使う。ここで例として示した回路は、センサー(SW1)が動作して接点が閉じるとLED(D1)が点灯し、ラッチでその状態を維持するというものだ。
図4 ラッチを使った出力保持回路 2端子機能部品の「ラッチ」を使った回路である。短時間しかオン状態を維持しないタイプのセンサーと組み合わせて使うと有効だ。図中の「ラッチ」には4つの端子があるが、実際には2つのスイッチ(SW1とSW2)も含めて、赤い点線で囲った部分を1つの小型基板にまとめれば、2端子機能部品として扱うことができる。(クリックで画像を拡大)
図4を簡単に説明する。電源投入時にラッチはリセットされた状態になっており、LEDは消灯している。センサーがオンするとLEDが点灯し、同時にラッチも動作して、センサーがオフに戻った後もLEDが点灯した状態を保つ。すなわちSW1の接点が開いても、電池から供給される電流が[LED]→[ラッチ]→[R1]と流れ続ける仕組みだ。ラッチをリセットするには、押しボタンスイッチ(SW2)を押す。LEDが消灯し、回路は初期状態に戻る。
従来、こうしたラッチ回路ではリレーを使うのが一般的だったが、リレーは消費電流が大きかった。そこで、サイリスタやフォトカプラなどの部品をラッチに使って、2端子機能部品を実現した。
アンプは簡易的な拡声器に便利
最後に紹介するのはアンプの使用例だ(図5)。このアンプは、簡易的な拡声器などに使うと便利である。
図5 音声の増幅にも使える 2端子機能部品の1つ「アンプ」を利用した音声増幅回路である。簡易的な拡声器などに利用価値が高い。図中の「アンプ」には4つの端子があるが、実際にはマイク(MIC1)も含めて、赤い点線で囲った部分を1つの小型基板にまとめれば、2端子機能部品として扱うことができる。(クリックで画像を拡大)
この回路を簡単に説明しよう。アンプは、マイクなどの入力デバイスをつなぐとともに、スピーカに直列に接続する。これでマイクの信号を増幅して、スピーカを駆動する。アンプのバリエーションとしては、利得が100倍、200倍といった固定値の他、利得可変のタイプなどを準備しておく。
この方式の良い点は、スピーカと電池を1つの箱に収めておけば、マイクをつないだ小型のアンプをその箱に接続するだけで回路が完成するところだ。マイクに入るノイズが軽減され、ハウリングが起きにくい。
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