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パルス電流と交流電源の関係超入門! イチから覚える電源回路(8)(2/2 ページ)

これまでの連載で、電流制御コンバータには三角波のようなパルス状の電流が流れることが分かりました。今回は、そのパルス電流と交流電源の関係について解説します。

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 少なくとも、Idが0電流にならない条件を満足する必要があります。では、この条件を守るためにはどのようなことを考えればよいのでしょうか。

 それには、フィルタ(インダクタ)に流れる電流のリプル(交流)成分のピーク値が最低限Idを超えない値にしなければなりません。図2に示すように、フィルタ(インダクタ)には直線近似ですが振幅ΔEdで三角波状の電圧が加わります。この電圧見合いの電流がフィルタに流れ、電流のピーク値がId未満であることが最低限必要となります。

 三角波状の電圧Vfの実効値は、次のように表されます。

  Vf=ΔEd/2√3

 従ってフィルタに流れる電流のリプルピーク値Ifpは

  Ifp=√2×Vf/ωLf

    ω=2πf  f :コンバータ動作周波数

 フィルタ電流がコンバータ動作周波数領域で連続する条件は、以下となります。

  Ifp<Id= D×IQP/2

 この様子を図3に示します。Ifpをどこまで小さくするかは、設計者に任されています。フィルタの大きさ、EMCとの兼ね合いなどがあります。

photo
図3 フィルタリプル電流

 さて、設計者はΔEdの大きさを決めねばなりません。これはキャパシタCと負荷の大きさによりますが、交流電源電圧波形のどこまで低い領域を使えるようにするか腕の見せ所です。キャパシタCを大きくして適用範囲を広げますが、市販のコンバータ制御ICは固定周波数のものが多く、スイッチング素子QのON/OFF時間の制約と整合を取ることが必要となります。

 ΔEdの大きさは安全サイドでおおまかの近似ですが、

  ΔEd≒DT×IQP/2C

 これまでの考察からコンバータのスイッチング周波数を考えると、LやCはとても小さくできるのは自明でしょう。この条件を踏まえて、フィルタの設計をしてください。40dB/decade1段でいくのか2段でいくのか、コストと性能のバランスを取ることが必要となります。

 これらの考え方は本連載の第4回「解のない整流回路を作ってみよう」で解説した内容と同じです。周波数が違うだけで、考え方は一緒です。

 やれやれ、これで電気的にはなんとかなりそうですが、どうもこの回路は電源周波数の倍周波での振動音を発生しそうです。あまり大きな容量には向かないかもしれません。製品を作るということは、さまざまな影響を考えることが必要ですね。

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