なにそれ、おいしいの? 耳慣れない機能の正体を探る:英文データシートを“読まずに”活用するコツ(4)(2/2 ページ)
半導体製品には、メーカーが競合他社品との差別化を狙って開発したユニークな機能が搭載されていることが少なくありません。そうした機能には、メーカーが独自の呼称を与えている場合が多く、その実体を理解するには技術資料を詳しく読み込む必要があります。英文のデータシートでそうした場面に遭遇したら、どうすればよいでしょうか?
パラメトリック検索をうまく使おう
この他、耳慣れない名称の機能に出会ったときには、同じ機能を搭載した初期の製品のデータシートを探してみることも有効です。今回例に取り上げた製品は最新のもので、まだデータシートの日本語版が提供されていませんが、古い製品ならば可能性があります。
まずは、半導体メーカーのWebサイトにアクセスし、パラメトリック検索(Parametric Search)でRS-232のAutoshutdown Plusの機能を有した古い製品を探してみましょう。品種から絞り込んでいきます。「インタフェースおよびインターコネクト」をクリックし、さらに「ラインドライバ/レシーバ」、「RS-232ラインドライバ/レシーバ」と選択します。すると次のような画面になるはずです。そして、検索パラメータの1つである「Features」の項目に表示された「Auto-Shutdown Plus」をクリックすれば、この機能を備えた品種だけが表示されます。
次に、型番でソートします。この中で古そうな製品(型番が“若い”、つまり数字が小さかったりアルファベットがABCの順番でより前方だったりする製品)を探してみましょう。“若い”型番の1つに「MAX3387E」があります。「Transceiver for PDAs and Cell Phones(PDAや携帯電話向けトランシーバ」と説明がありますね。“PDA向け”なんて、ちょっとイマドキではない感じ。これはきっと新しい品種ではないはず!
パラメトリック検索で絞り込む 半導体メーカーがWebサイトで提供しているパラメトリック検索の機能を使って、お目当ての製品と同じ機能を備えた、リリース時期がもっと古い製品を見つけ出します。 (クリックで画像を拡大します)
そこで、この製品の情報を集約したページにアクセスしてみると、ありました。日本語版のデータシートが用意されており、その中にAutoShutdown Plusの機能がバッチリ日本語で説明されています。8ページ目の左下をご覧ください。ここを見れば、英文の読解を避けてこの機能を理解することができますね。
こんなたどり方もあります
他の製品の例も見てみましょう。例えば、昇圧型のDC-DCコンバータICを探していると「True-Shutdown」なる名称の機能を目にすることがあります。“真のシャットダウン”って何?なぜそれが必要なの?という疑問、読者の皆さんならある程度想像できると思いますが、これらの答えをデータシートから把握できるかどうか、確かめてみましょう。
まずは、半導体メーカーのWebサイトに備わった検索窓にキーワードとして「True-Shutdown」を放り込んでみます。その結果を見ると、この機能は昇圧型DC-DCコンバータICのみならず、いろいろな製品に搭載されているようですね。
フリーワード検索も活用 半導体メーカーのWebサイトに埋め込まれた検索窓に、調べている機能の名称を直接入力して検索してみました。当初にその機能名称にぶち当たった製品以外にも、同じ機能を搭載したいろいろな製品がヒットします。 (クリックで画像を拡大します)
先ほどのように、最新の製品では英語版のデータシートしか提供されていない可能性があるので、型番が少し“若い”製品をピックアップしてみます。この検索結果の中では、「MAX8xxx」台は新しい品種のようなのでスルー。検索結果をさらに下に見ていくと、チョイ古な型番「MAX1xxx」台の「MAX1795-MAX1797」が出てきました。この製品を見てみましょう。
期待した通り、日本語のデータシートが用意されていました。True-Shutdownは“真のシャットダウン”と訳されていますね。この例では、9ページの「シャットダウン」という項目に機能の説明がありました。
ただ、その記述を読むと「シャットダウン中は同期整流器が出力を入力から切断するため、従来のブーストコンバータでシャットダウンモードの時に存在するDC導電経路は不要です」ということですが、ちょっとピンときませんね。同じ製品の英語版のデータシートに当たったとしても、英語で同じようなことが書いてあるだけでしょう。あまり期待できません。別の製品の日本語データシートを見てみましょう。
「MAX8627」という製品も同じようにTrue-Shutdown付きで日本語データシートがありました。製品情報ページをよく見ると、古い製品のためか、供給状況(ステータス)が「新規設計用には推奨できない」となっていますが、今の狙いはTrue-Shutdownという機能を理解することだけですから、気にせず日本語のデータシートに目を通していきましょう。
True-Shutdownの説明を探すと、10ページにありました! このような趣旨の説明です。「通常のブースト回路では、シャットダウン中でも、同期整流器のボディダイオードを介して出力につながった負荷に電流が流れ出てしまい、入力に接続した電池が消費されてしまう。負荷を切断できない場合、これを防ぐには外付けのスイッチが必要になる。これに対しTrue-Shutdownは、外付けスイッチ不要で、シャットダウン時に出力をグラウンドに落とし、入出力の間のあらゆる接続を排除する」。探していた答えが見つかりましたね。
今回の例で取り上げた製品のように、特長的な機能は必ずうたい文句として記載されており、そのメカニズムについても説明があるものの、その機能が解決する従来の問題点が明示的に記述されていない場合も少なくありません。
さらに、発表されたばかりの製品やそのアプリケーションノートは、当初は日本語版が用意されておらず、英語版だけしか提供されていないのがほとんどです。外資系の半導体メーカーは、国内における顧客の声やその製品の市場性を見極めてから日本語化することが多いので、時間がかかってしまうことが多いのが実情です。
そこで、ユーザーが英語を避けつつユニークな機能について調べるには、今回紹介したように、同じ機能を備えた少し古い製品のデータシートやアプリケーションノートの日本語版を探すのが近道になります。
Profile
赤羽 一馬(あかばね かずま)
1995年に日系半導体メーカーに入社。5年間にわたって、アナログ技術のサポート/マーケティングに従事した。2000年に外資系アナログ半導体メーカーのマキシム・ジャパンに転職。現在は、フィールドアプリケーション担当の技術スタッフ部門でシニアメンバーを務めている。
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