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非接触ジェスチャインタフェースを1チップで実現、ファームもツールも提供マイクロチップ MGC3130

各種機器への組み込みに向けた3次元ジェスチャ制御ICである。近接した人体の動きを静電容量の変化として検出する電極と組み合わせることで、エンドユーザーが手先の動作で機器を操作するインタフェースを実現可能だ。ジェスチャ認識のアルゴリズムをライブラリ化し、ファームウェアとして供給する他、開発ツールも提供する。

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 Microchip Technology(マイクロチップ テクノロジー)は2012年11月、各種機器への組み込みに向けた3次元ジェスチャ制御IC「MGC3130」を発表し、「Embedded Technology 2012/組込み総合技術展(ET2012)」(2012年11月14〜16日、パシフィコ横浜)に出品した。人体の近接による電界の変化(静電容量の変化)を検知し、機器のエンドユーザーの手や指の動き(ジェスチャ)を判別する同社独自の技術「GestIC」を使う。機器の設計者は、この制御ICを搭載するとともに、静電容量の変化を取り出す電極を作り込めば、非接触のユーザーインタフェースを実現できる。

Andreas Guete氏
MGC3130の評価キットを掲げるMicrochipのAndreas Guete氏。

 ジェスチャの検出範囲は、電極を作り込んだ面と、そこから最大15cm離れた面で挟む空間である。手指の位置検出の分解能は150dpiとマウス並みだ。消費者向けのモバイル機器や、ゲーム機用コントローラ、テレビ用リモコンの他、PCやタブレット端末用のドッキングステーション、さらに医療機器や産業機器など、幅広い分野の機器に適用できるという。「これは機器操作用ユーザーインタフェースにおいて、タッチスクリーンに次ぐ革新だ」(Microchip Technology HongKongでHMID, Advanced Input SolutionsのAsia Pacific担当Marketing Managerを務めるAndreas Guete氏)。

 今回Microchipが発表したMGC3130は、以下の回路ブロック群をまとめて集積したSoC(System on Chip)タイプの制御ICである。すなわち、電界の変化を検出するための変調信号を生成する駆動回路と、電界の変化の情報が重畳したアナログ信号を電極から取り込んでデジタルデータに変換するアナログフロントエンド回路、そのデジタルデータを解析して、ジェスチャ情報と3次元空間における対象物(手や指)の位置情報を求める32ビットプロセッサ、プロセッサ上で稼働する解析アルゴリズムを格納しておくフラッシュメモリ、導出した情報をホストマイコンに出力するためのI2C/SPIインタフェースを1枚のチップに集積した。

MGC3130の回路ブロック図
MGC3130の回路ブロック図である。出典:Microchip Technology (クリックで画像を拡大)

 同社によれば、電界ベースのこうした3次元ジェスチャ制御ICは「世界初だ」(Guete氏)。これまでも、ジェスチャ制御の用途を想定し、電界の変化を検出するアナログ信号をデジタルデータに変換してそのまま出力するICはMicrochip自体や競合他社が製品化していたが、今回のように生データを解析し、ジェスチャ情報や手指の位置情報を求めて出力するような制御ICは存在していなかったという。「従来品では、ホストマイコン側に生データを解析するアルゴリズムを実装しなければジェスチャ認識の機能を組み込めなかった。新製品を使えば、1チップでそれが可能になる。しかも、解析アルゴリズムのファームウエアは当社がライブラリ化して供給するため、機器設計者が自ら開発する必要はない。従って、短期間で簡単にジェスチャインタフェースを機器に搭載できる」(同氏)。

他方式に比べてシンプルかつ低消費電力

 ジェスチャ認識の手法としては、MGC3130が採用する電界ベースの方式の他にも、可視光を捉える一般的なカメラや、赤外線を放射するLEDとその赤外線を検出する特殊なカメラを使う方式などがある(参考記事:身ぶり手ぶりで機器を操作、ジェスチャ認識システムは実用段階へ)。

 それらとの違いについてMicrochipは次のように説明した。すなわち、カメラを使う方式は、いずれも比較的長距離でジェスチャを検出するのに向いているが、機器に近接した領域での検出には使えない。また、検出できるのは、カメラの視界に収まる範囲に限定される。さらに、発光素子やカメラのレンズが露出するように、機器の筐体に開口部を設ける必要がある。

開発ツール
ET 2012での展示の様子である。評価ボードとPCをUSBでつなぎ、PC上で稼働する開発ツール「AUREA」でジェスチャ制御ICの出力を読み取って見せていた。出力として具体的には、手指の位置情報(X、Y、Z)の他、検出したジェスチャ情報(例えば、手を回転させる、振るという動作の種別と、その方向と速度)、各電極から読み取った生データが得られ、開発ツール上ではそれがグラフィカルに表示される。 (クリックで画像を拡)

 電界ベースの方式では、これらの制約がなく設計自由度が高まる上に、コストも低く抑えられるという。加えて、消費電力も大幅に低減でき、モバイル機器に組み込みやすいというメリットもある。具体的な消費電力は、電界の変化を検出しながら手指が近接するのを待機する、いわゆるアクティブスリープモードのときに150μWと低い。手指が近づくとフル動作モードに移行し、その際の消費電力は90mWである。「カメラ方式では、ワット(W)オーダーの消費電力が必要になる。それに対して最大90%の省電力化が可能だ」(Guete氏)。

 MGC3130のパッケージは5×5mmの28端子QFN。既にサンプル出荷を始めており、量産は2013年4月に開始する予定である。大量購入時の単価は2.26米ドル。評価キット「Sabrewing(セイバーウイング)」も用意した。型番は「DM160217」、価格は168米ドル。制御ICであるMGC3130を搭載した評価ボードに、サイズが5インチ、7インチと異なる電極を金属パターンで作り込んだ。ジェスチャ解析アルゴリズムのライブラリ「Colibri Suite(コリブリスイート)」や、グラフィカルユーザーインタフェースを備えたWindows 7対応の開発ツール「AUREA(オリア)」も付属する。

評価ボード
ジェスチャ制御ICと電極を実装した評価ボードである。出典:Microchip Technology (クリックで画像を拡大)
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