低振幅・低周波のセンサー出力を扱う、アナログ信号調節の最新テクニック:アナログ設計(4/5 ページ)
現実世界の物理量を検出するセンサーの多くは、検出結果を振幅が小さく周波数が低いアナログ信号として出力する。それを処理するには、直流(DC)付近で利得と精度がいずれも高いアナログ信号調節(シグナルコンディショニング)回路を後段に設ける必要がある。本稿では、センサー出力の処理に向けたアナログ信号調節技術の最新状況を解説する。
エネルギーハーベスティングのソリューション
Linear Technologyのパワー製品部門で製品マーケティングのディレクターを務めるTony Armstrong氏は、リモートワイヤレス・ノード用の電源に再生可能エネルギーを利用することと、再生可能エネルギーの利用は適切なハーベスティングデバイスや電力管理デバイス、バッテリ充電デバイスによってもたらされることを詳しく説明した。
再生可能エネルギーの利用は、エネルギー変換や既存のエネルギーを効率的に利用することへの市場機会を拡大しつつある。それだけではなく、ワイヤレス・センサーネットワークの電源供給にエネルギーハーベスティング・デバイスを活用する道を広げつつある。ビル管理の自動化や故障予測保守などで、ワイヤレス・センサーネットワークはすでに利用されている。
Armstrong氏によると、過去にはエネルギーハーベスティングといえば、太陽電池パネルと風力発電機を意味していた。最近では新たなエネルギーハーベスティング技術が登場しており、環境中に存在する様々なエネルギーを発電に活用するようになった。例えば、熱電発電は熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。ピエゾ素子は機械的な振動エネルギーを電気エネルギーに、ガルバニクスは空気中の水蒸気を電気に変換する。これらの変換デバイスは、遠隔地にあるセンサーに電源を供給したり、コンデンサや薄膜電池などの蓄電池を充電したりする。
こういったエネルギーハーベスティング分野に向けて、Linear Technologyはいくつかの製品を供給している(表1)。いずれの製品も、静止電流が標準6μA以下、標準450nA(0.45μA)といった低い消費電流を特徴とする。起動電圧は20mVと低く、許容入力電圧は連続で34V、パルスで40Vと高い。さらに、AC入力が可能な品種や複数の出力を備えた品種、電力管理機能を搭載した品種、自動極性追随機能を内蔵した品種、太陽電池の最大電力点(MPP)制御機能を備える品種、温度差が1℃でも発電可能な品種、実装専有面積が極めて小さな品種などを用意している。
太陽エネルギーは常に変動する。そこで太陽電池を電源とするシステムは通常、二次電池を装備する。太陽電池は本来、効率の低いデバイスである。出力が最大となる条件があるので、その条件を満たすように動かすことが望ましい。Armstrong氏によると、出力が最大となる電流電圧特性が光の照度によって変化することが問題である。
単結晶太陽電池の出力電流は入射する光の強度に比例し、出力が最大となる動作点では出力電圧がほぼ一定になる。光強度が一定のときに、電流電圧特性が電流一定から電圧一定に変化する(あるいはその逆に変化する)折れ曲がり点で、太陽電池の出力は最大になる(図6)。この折れ曲がり点を「MPP(最大電力点)」と呼ぶ。
太陽光発電システムの設計では、太陽電池の動作点を常にMPPに維持することが非常に重要である。Linear Technologyの太陽電池の出力を使って二次電池を充電する機能をまとめたLinear Technologyの充電制御IC「LT3652」は、入力電圧安定化ループを備えており、入力電圧が設定値よりも低くなると、充電電流を下げる。入力電圧の設定値は抵抗分圧であらかじめ決めておく。また太陽電池が電源として使用されている場合は、入力電圧安定化ループが太陽電池の動作をピーク出力条件近傍に維持するように機能する。
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