リアルタイムスペアナにアジレントが参入、先行する競合を高いRF性能で追撃:アジレント N9030AK-RT1/RT2
スペクトラムアナライザ大手のアジレント・テクノロジーが、テクトロニクスやローデ・シュワルツが先行するリアルタイムスペクトラムアナライザの市場に参入した。高いRF性能を訴求し、シェアの獲得を目指す。
アジレント・テクノロジーは2013年2月、デジタルIF方式を採用するスペクトラムアナライザ(いわゆるリアルタイムスペアナ)の市場に新規参入した。同市場には以前からテクトロニクスが製品を供給している他、2010年にはローデ・シュワルツも参入している(リアルタイムスペアナの仕組みや各社の製品の特長を解説した参考記事)。アジレントは、先行するこれらの競合他社に比べて、スペアナとしての基本的なRF性能が高いことを訴求し、シェアの獲得を狙う。航空・防衛分野や、次世代無線通信の研究、先端科学材料の研究、デジタル家電・電気自動車の開発などに向ける。
専用機ではなく汎用機のオプションとして提供
アジレントが今回投入したのは、同社が従来からラインアップしていたシグナルアナライザ(変調解析機能を備えた高機能スペアナ)のハイエンドモデル「PXAシリーズ」にオプションとして追加可能なリアルタイムスペアナ機能である。PXAシリーズはもともと高いRF性能を売りにしており、そのRF性能をそのままリアルタイムスペアナでも利用できることが特長だ。「他社とは異なり、リアルタイムスペアナ専用機として供給するのではなく、汎用のシグナルアナライザに後付けできるオプションとして提供する。これは業界初だ。他社が当初からリアルタイム専用機として開発した製品は、RF性能が“いまひとつ”のレベルにとどまっていた」(同社)。
ここでRF性能とは、(1)感度が高い(すなわち表示平均雑音レベル(DANL)が低い)ことに加えて、(2)ダイナミックレンジが高く(つまり3次相互変調歪み(TOI)が高く、位相雑音が低い)、周波数軸上で高レベルの信号に重なって存在する低レベルの信号を分離して捉えられることである。具体的には、PXAシリーズが10GHzにおけるDANLとTOIでそれぞれ−155dBm、23dBmを達成しているのに対し、競合他社の既存の最高性能モデルは−152dBm、20dBmにとどまっていたという。
さらにアジレントによれば、出現しても一瞬で消えてしまったり、高速に変化したりして捕捉することが難しい信号でも確実に捉えられるように、(3)信号捕捉性能(POI:Probability of Intercept)が高いことも特長である。「競合他社の既存機種に比べて、POIが圧倒的に優れている」(同社)。例えば1GHzにおいて、レベルが−76dBm以上、継続時間が3.57μs以上の信号であれば、100%の確率で捕捉可能だ。同社によると競合他社種は、同一周波数において−71dBm以上と比較的大きいレベルと、3.7μs以上と比較的長い時間が必要だという。
市場で先行している競合他社機に比べて信号捕捉性能が優れると主張する。すなわち、レベルがより小さく、継続時間がより短い信号でも捕捉しやすいという。出典:アジレント・テクノロジー (クリックで画像を拡大)
2013年2月28日に販売を始めた。オプション価格は、リアルタイム帯域幅が85MHzの「N9030A-RT1」が71万7213円、同160MHzの「N9030A-RT2」が102万4590円(いずれも税別の参考価格)。PXAシリーズの本体を新たに購入し、160MHz帯域幅のオプションを搭載した場合の合計価格は「1000万円を切る程度」(アジレント)である。近日中に出荷を開始する予定だ。
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