サンプリング速度が最大5Mで消費電力39mW、ADIの18ビットSAR ADC:アナログ・デバイセズ AD7960/AD7961
アナログ・デバイセズ(ADI)の18ビット逐次比較型(SAR)A-Dコンバータ「AD7960」は、サンプリング速度が最大5Mサンプル/秒と高速で、同時に低消費電力を実現した。競合する同等品に比べ最大サンプリング速度は2倍で、5Mサンプル/秒で動作時の消費電力はCNV信号がLVDSモードで46.5mW(CMOSモードでは39mW)と約70%少ない。
アナログ・デバイセズ(ADI)は2013年9月、サンプリング速度が最大5Mサンプル/秒と高速で、同時に低消費電力を実現した18ビット逐次比較型(SAR)A-Dコンバータ「AD7960」を発表した。競合する同等品に比べ最大サンプリング速度は2倍で、5Mサンプル/秒で動作時の消費電力はCNV信号がLVDSモード時で46.5mW(CMOSモード時は39mW)と約70%少ない。MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置やCT(Computed Tomography)装置などのデジタル画像信号処理用途や多チャネル入力を必要とする産業計測用途などに向ける。消費電力が小さいことから電池駆動のポータブル機器用途にも適している。同時に、AD7960と端子互換の16ビットSAR A-Dコンバータ「AD7961」も発売した。
ADIはこれまでも、高速「PulSAR A-Dコンバータ」シリーズとして、分解能が16/18ビットでサンプリング速度が1M〜10Mサンプル/秒のSAR A-Dコンバータを発売してきた。しかし、これまでの18ビットA-Dコンバータでは、サンプリング速度の高速化と、低消費電力・高精度化はトレードオフの関係にあり、これらを両立することが難しかった、という。そこで新製品は、電荷再分配型CAP DACのスイッチ動作のタイミングを最適化するなど、設計を工夫することで、高速サンプリングと低消費電力化、高精度化を可能にした。
AD7960は、18ビットの分解能で5Mサンプル/秒のスループットを実現した。しかも、5Mサンプル/秒で動作している時の消費電力はCNV信号がLVDSモードの場合で46.5mWと少ない。同等性能の競合品では162.5mWとなっており、ほぼ70%削減できることになる。AD7960では、CNV信号をCMOSモードに切り替えることもできる。この場合は消費電力が39mWとさらに少なくなる。ADIによれば、CMOSモードで動作させてもLVDSモードの場合に比べて性能劣化は全くない、という。消費電力はサンプリング速度に比例するため、サンプリング速度を下げれば、それに応じて消費電力も小さくなる。
新製品は、直線性に優れAC特性が高いのも特長だ。積分非直線性誤差(INL)は±0.8LSB(標準)、微分非直線性誤差(DNL)は±0.5LSB(標準)、SN比は99dB(標準)である。さらに、フルスケール入力時のノイズフロアは22.4nV/√Hzと低い。パッケージは外形寸法が5×5mmの32端子LFCSPで供給される。基板占有面積は25mm2で競合製品と比べて約半分となる。しかも、パッケージは同時に発売したAD7961と端子配置の互換性があり、システム設計の最終段階で、実装するA-Dコンバータの分解能が18ビット品か16ビット品かを選択することもできる。
同社では、レールツーレール出力のオペアンプ「ADA4897」やレールツーレール入出力オペアンプ「AD8031」、基準電圧源「ADR4540/ADR4550」などを用意している。これらの製品とAD7960を組み合わせて信号処理回路を構成すれば、消費電力を抑えた高精度のシグナルチェーンを実現することができるという。
同時に発売したAD7961は、最大サンプリング速度や消費電力はAD7960と同一仕様で、分解能は16ビット、INLは±0.55LSB(最大)、DNLは±0.25LSB(最大)、SN比は95.5dB(標準)である。
AD7960/AD7961のいずれも製品出荷を始めている。1000個発注時の単価はAD7960が31米ドル、AD7961が21米ドル。この他、AD7960あるいはAD7961を搭載した評価用ボード「EVAL-AD7960FMCZ/EVAL-AD7961FMCZ」(それぞれ単価は99米ドル)、評価用プラットフォーム「EVAL-SDP-CH1Z」(単価は199米ドル)などを用意している。
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