新構造GaNパワートランジスタの実用化にめど、飽和電流10Aで耐圧600V:パウデック GaNパワートランジスタ
パウデックは、分極スーパージャンクション構造のGaN(窒化ガリウム)パワートランジスタの実用化にめどをつけた。直径150mmのシリコン基板上に作成したGaNトランジスタを評価したところ、飽和電流が10A以上で耐圧が600V以上の特性が得られた。2014年度中にこのチップのサンプル出荷を始める予定だ。
パウデックは2013年10月、分極スーパージャンクション構造のGaN(窒化ガリウム)パワートランジスタの実用化にめどがついたと発表した。直径150mmのシリコン基板上に作成したGaNトランジスタを評価したところ、飽和電流が10A以上で耐圧が600V以上の特性が得られた。2013年度中に量産化技術にめどをつけ、2014年度中にこのチップのサンプル出荷を始める予定だ。さらに、2015年度には耐圧が1200Vを超えるチップの実用化を目指している。
同社は2011年に英国シェフィールド大学と共同で、新型GaNトランジスタに向けて分極スーパージャンクションと呼ぶ新構造を提案した。そしてサファイア基板上にGaNを形成したウエハーで製造したGaNトランジスタの動作を実証。その後、サファイアより安価で放熱特性に優れるシリコン基板上にGaNを形成した「GaN on Silicon」によるデバイス開発を行ってきた。
これまで、150mmシリコン基板上に、膜質に優れたGaNエピタキシャル膜を結晶成長させるプロセス技術の開発や、分極スーパージャンクション領域でのチャージバランスの最適化などに取り組んできた。これらの開発成果をもとに今回、GaNトランジスタを試作したところ、耐圧600V以上、飽和電流10A以上の特性を得ることができた。
同社は今後、デバイス性能のさらなる向上に取り組む。直径200mmのシリコン基板へGaNエピタキシャル膜を均一に成長させるプロセス技術の開発などを行い、2015年度に耐圧1200V超品、2016年度には耐圧3000Vで飽和電流50A以上のデバイス特性を達成していく計画だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 富士通セミコンがGaNパワーデバイス参入、150V耐圧品をサンプル出荷
富士通セミコンダクターは、GaN(窒化ガリウム)を用いた150V耐圧パワーデバイスのサンプル出荷を開始した。同社としてGaNパワーデバイスのサンプル出荷は今回が初めて。量産開始時期は2014年中を予定している。富士通セミコンでは、GaNパワーデバイス関連事業ととして2015年度約100億円の売り上げを目指している。 - 従来比1/20以下サイズのGaN-HEMTを用いた10W出力ミリ波帯モジュール
富士通研究所は、窒化ガリウム(GaN)による高電子移動度トランジスタ(HEMT)を用いて、ミリ波帯(30G〜300GHz)で使用可能な10W出力の送受信モジュール技術を開発した。 - 1200V耐圧のSiCバイポーラトランジスタ、オン抵抗は17mΩ
フェアチャイルドがSiC材料で製造するBJT(バイポーラジャンクショントランジスタ)は、耐圧1200Vでオン抵抗が17mΩと低い。同様にSiCを使うJFETやMOSFETに比べて、スイッチング損失や導通損失が少ないという利点もあるという。スイッチング周波数が高いほど、それらの損失の差は広がり、BJTの優位性が大きくなる。