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どう選ぶ? PCとターゲットを接続するツール マイコン入門!! 必携用語集(8)(2/2 ページ)

前回の開発環境編では、マイコンを用いたシステム開発で使用する開発ツールや統合開発環境(IDE)を中心に、全体的な開発の流れについて解説しました。そこで今回は、デバッグケーブル、ICE、エミュレータといった、ホストPCとターゲット・ボード間を接続するツールについて解説します。今回の記事を通して、目的に合ったツールを見つけてみてください。

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オン・チップ・エミュレータ

マイコンによっても異なりますが、近頃のフラッシュメモリを内蔵したマイコンでは、デバッグに必要なモジュール(デバッグ・モジュール)がマイコン内部に組み込まれていることが一般的です。ホストPCから統合開発環境(IDE)上で「プログラム実行」や「プログラム停止」などの命令が実行されると、デバッグ用ケーブルに内蔵(または、ターゲット・ボード上に内蔵)のコマンド・コンバータ(命令変換器)機能により、マイコン内部のデバッグ・モジュールが解釈できる命令に変換されます。そして、デバッグ用モジュールは受信したコマンドに応じた命令をCPUへ送り出します。


ターゲットボードにデバッガ機能が搭載されていない場合のオン・チップ・エミュレータ

ターゲットボードにデバッガ機能が搭載されている場合のオン・チップ・エミュレータ

 このように、ホストPCとターゲット・マイコンの間に位置し、コマンド・コンバータ機能を有するデバッグ用ケーブル、または装置をオン・チップ・エミュレータと呼びます。

 世の中にはさまざまなオン・チップ・エミュレータがありますが、大きく以下の2つに分類できます。

JTAGエミュレータ

 JTAG(Joint Test Action Group)という団体が規定するボードテスト用の機能を基に、デバッグ機能を拡張したエミュレータを指します。


JTAGエミュレータの一例

 JTAG対応のデバッグ・モジュール搭載のマイコンは数多くのマイコン・ベンダーから発売されています。そのような中、1つのJTAGエミュレータで、複数ベンダーのマイコンに対応できるものもサード・パーティ(ツール・ベンダー)各社から発売されています。そのため、例えば、2つの開発案件で異なるマイコンを使用する場合でも、そのマイコンが共にJTAG対応デバッグモジュールを搭載していて同じCPUコアを搭載(異なるCPUコアでも対応可能な場合があります)していれば、手持ちのJTAGエミュレータを再利用できる可能性があり、ツールへの投資を抑えることができます。STマイクロエレクトロニクスは、ARM Cortex-Mシリーズコア(Cortex-M0/M3/M4)を搭載したマイコン・ファミリ「STM32」を展開していますが、同シリーズに対応するJTAGエミュレータとして、「ST-LINK/V2」も合わせて提供しています。

専用エミュレータ

 マイコン・ベンダー各社の独自CPUコアを搭載したマイコンに対応するエミュレータを指します。通常、独自コアを搭載するマイコンには、ベンダー固有のデバッグ・モジュールが実装されており、マイコン・ベンダーやそのサードパーティーは、それぞれのデバッグ・モジュールに応じたエミュレータを用意しています。専用エミュレータは、各デバッグ・モジュールに最適化された設計が可能となる反面、異なるデバッグ・モジュールには対応できず汎用性に欠けるというデメリットがあります。

 なお、各種イン・サーキット・エミュレータ、および、オン・チップ・エミュレータの詳細に関しては、エミュレータメーカー各社のウェブサイトをご覧ください。

 採用するマイコンが決まると、そのマイコンに搭載のデバッグ・モジュールが一意に決まります。そのマイコンがJTAG対応デバッグ・モジュールを搭載していれば、JTAGエミュレータを採用することになりますし、独自CPUコア搭載のマイコンの場合、そのCPUコアに対応したデバッグ・モジュールが搭載されているわけですから、それに合う専用エミュレータを用意する必要があります。

採用するマイコンで選ぶべきツールが決まる

 このように、採用するマイコンに合わせて、オン・チップ・エミュレータの種類が選択され、デバッグの内容や目的に応じて、オン・チップ・エミュレータを選ぶべきか、イン・サーキット・エミュレータを選ぶべきかを決めることができます。

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