アジレント、コストパフォーマンス追求型のマイクロ波信号発生器を投入:アジレント MXG/EXG
アジレント・テクノロジーは、マイクロ波アナログ信号発生器の製品構成を一新し、新たにミドルエンドモデル「N5183B MXG」と低価格モデル「N5173B EXG」を発売した。これまで1000万円を超えるようなハイエンドモデルに限られた複雑な信号発生機能などを備える。
アジレント・テクノロジー(以下、アジレント)は2013年11月27日、マイクロ波アナログ信号発生器の製品構成を一新し、ミドルエンドモデル「N5183B MXG」と低価格モデル「N5173B EXG」を発売した。従来のミドルエンドモデルより、コストパフォーマンスを向上させるとともに、ハイエンドモデルのベクトル信号発生器のみで対応した発生させた信号の変調やノイズを付加するマルチファンクションジェネレータ機能などを追加した。
新製品2つの開発コンセプトは、従来製品や競合他社製品に比べ、価格を抑えながら性能と機能を向上させる――だ。アジレントは、マイクロ波信号発生器分野では「世界で6〜7割、国内では約8割のシェアを誇る」(同社)とリーダー企業を自負し、常に業界に先駆けた製品展開を進めてきた。これまでも、60GHzを超える超高周波に対応するハイエンドモデル「PSGシリーズ」と、コストパフォーマンスを追求した「MXGシリーズ」を展開してきた。ただ、「低価格帯、ミドルエンド帯は競合製品の新製品投入も増加傾向にある他、医療分野などマイクロ波信号発生器を新たに使い始めるユーザーが増えていることもあり、ミドルエンドモデル、エコノミーモデルの注目度が高まっている。信号発生器のリーディング企業として一層、このクラスの製品の競争力を高めるため、新製品を開発、投入した」と説明する。
新製品の「N5173B EXG」は、従来のミドルエンドモデル「N5173A MXG」よりも上回る性能、機能を搭載しながら、価格を20万円程度引き下げた“エコノミーモデル”だ。もう1つの新製品「N5183B MXG」は、ハイエンドモデルのPSGシリーズの性能、機能をより手ごろな価格で実現した新しいミドルエンドモデルとして位置付ける。
いずれの製品も、高い周波数の信号発生で顕著となる出力不足、ノイズ増大という課題を解決する新技術を搭載し、性能向上を図っている。出力レベルを引き上げた場合にも、ノイズを高効率で除去できる新たなフィルタ技術や出力を一定に保つためのオートマチックレベルコントロール(ALC)技術を採用。さらに、発振器を従来のTCXO(温度補償型水晶発振器)からOCXO(恒温槽付水晶発振器)に置き換え、発振安定性を高めて位相雑音を抑制した。その結果、N5173B EXGの出力は20GHzで+15dBm(標準構成時)を誇るなど従来ミドルエンド品であるN5173A MXGと比べ4〜10倍程度ハイパワーとなった。10GHz、10Hzオフセット時の位相雑音も−57dBc/Hz(典型値)を達成している。さらに、N5183B MXGは、これまでPSGシリーズのみで採用されてきた「トリプルループ・PLL・シンセサイザ」を搭載し、さらに性能を追求。10GHz、10Hzオフセット時の位相雑音は−63dBc/Hzとなっている。
機能面では、2製品とも新たにマルチファンクションジェネレータ機能を搭載した。この機能は、信号に変調をかける、任意のノイズを載せるといった、従来はハイエンドのベクトル信号発生器に限られた信号の加工が行える機能だ。最大3つの加工が行え、より複雑な信号を作り出せるようになる。「従来は、2000万円程度のモデルでのみ実現できた機能を、簡易的ながら10分の1程度の価格のモデルで実現できるようになった画期的な機能。ハイエンドモデルの高い性能は不必要ながら、複雑な信号を求めていたユーザーに最適な機能だ」と説明する。
さらに、昨今、市場で出回る新たなツール類との連携機能との強化なども図っている。例えば、USBインタフェースを持つパワーセンサーとの連携機能は、パワーセンサーの値を自動で読み取り、パワーセンサーの測定点で任意の出力値になるよう自動で出力を調整できるようになった。「これまで、何度も手作業で調整し任意の出力を得ていた手間が省け、計測時間の短縮につながる機能。非線形な出力になるパワーアンプやコンバータなどの後段で任意の出力が必要な場合に重宝するだろう」としている。
価格は、N5183B MXGが246万4970円から、N5173B EXGが181万7405円からとなっている。
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