パルススキッピングモードの長所/短所とその回避法:自動車用スイッチング電源設計(3/5 ページ)
スイッチモード電源(SMPS)の多くは、出力を制御するために固定周波数制御によるパルス幅変調(PWM)方式を用いています。PWM方式のSMPSの多くは、「パルススキッピングモード」という動作モードを使用しています。本稿は、パルススキッピングモードとは、どのような状況で使用され、どのような利点や短所があるのかを解説します。さらに、パルススキッピングモードを用いないSMPSを実現する方法も紹介していきます。
具体例2)ドロップアウトモードのパルススキッピングとは
今度は、同じデバイスを用いて、ドロップアウトモードのパルススキップ動作を見ていきます。
ドロップアウトモードやトラッキング機能を持つスイッチングコンバータ/コントローラーICは、入力電圧が要求される出力電圧とほぼ同等になると100%のデューティサイクル動作を行おうとします。
ハイサイドFETを駆動するためには内部電源が必要になり、構成にもよりますが、再充電機能が要求されることもあります。なお、チャージ・ポンプ回路や外部電源を使うことで、真の100%デューティサイクルが達成できます。ただ、一般的には、ブートストラップ構成が使われ、ブートストラップのための容量は、瞬時にFETを切り替えることによって、再充電されます。そのため、ローサイドを短くオンにします。ローサイドFETのオン動作は、数パルスごとに行い、一定のパルスはスキップされます。例に挙げるデバイスでは、4パルスに1回のパルスがブートストラップの再充電に使われています。以下の図はその様子の波形です。スイッチング周波数は600KHzから150KHzに下げられ、入力電圧5.10V、出力電圧4.96V、負荷電流1Aの動作となっています。
【図3】ドロップモード時のパルススキッピング。CH3(水色)=VIN,CH1(黄色)=Vout、CH2(赤色)=PhaseNode。/条件:600kHz,VIN=5.10V,Vout=4.96V,Iout=1A (クリックで拡大)
再充電のサイクルは、デバイスによります。例に挙げたデバイスは4パルス毎の充電でしたが、8パルスごとにしか充電しないデバイスも存在します。
図3で見受けられる出力電圧の低下は、一般的にはFETのオン抵抗(RDSON)や再充電中に失った電力によります。誘発される低調波(サブ・ハーモニック)以上に高い懸念事項となります。
例に挙げたSMPSで使用した外付けFETのRDS(on)は約60mΩになっています。
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