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IoTのためのデバイスとローカルネットワークIoTの設計(4/4 ページ)

注目を集めるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)。IoTの概念は複雑ではないが、その実現は複雑だ。IoTを構成するには、それぞれは単純だが、多数の要素が必要となる。本稿では、IoTデバイスと連係動作する通信技術を紹介する。

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IPv6がIoT実現の主要基盤技術

 想定するシステムがローカルでの(局地的な)M2Mだけならば、先述のワイヤレスプロトコルの全てが適切に利用可能だ。しかし、目標がインターネットを介して遠隔地からデバイスをコントロールすること、あるいはデバイスからセンサーデータを取得し遠隔地にあるサーバに保存することならば、インターネットプロトコル(IP)が不可欠だ。M2MネットワークがIPをネイティブに(または変形形式で)処理できない場合には、ローカルプロトコルをインターネットケーブルプロトコルに変換する中間ゲートウェイを利用すれば処理可能できる。

 Freescale SemiconductorのKaivan Karimi氏とARMのGary Atkinson氏は、共著のホワイトペーパー“モノのインターネットを現実化するには何が必要か”において、Bluetooth Low Energy(以下、BLE)などの幾つかの通信技術がヘルスケア業界などのある種の垂直市場分野でデファクトスタンダードになりつつある、との判断を示している。一方、産業業界の制御や自動化の分野では、ZigBee、低電力Wi-Fi技術、6LoWPANの間で主流標準規格の位置をめぐる戦いが始まったばかりだ。

 可能な限りは、ローカルエリアネットワーク(LAN)やパーソナルエリアネットワーク(PAN)あるいはボディーエリアネットワーク(BAN)の全てがインターネットプロトコル類(IP、UDP、TCP、SSL、HTTPなど)を利用することが決定的に重要だ。

 IoTデバイスの有用性は、ローカルだけでなくグローバルな通信ができることにある。このことはインターネットの利用を意味するが、しかし、それは必ずしも、“HTTPとブラウザを利用するインターネット”を意味するものではない。IoTからのニーズに対し、よりよく対処し得るプロトコルも開発されつつある。さらに、これらのプロトコルはIPv6に適合するだろう。IPv4は、世界的なアドレスの不足、マルチキャスト能力の不足、世界的規模でのモビリティ(移動性)の欠如といった問題点を抱えているからだ。

 IPv6により設定されるアドレスは地球上の砂粒の数よりも多く、1人当たり10の30乗にもなるとの計算もある(人間の身体を形作る細胞の数が10の28乗であることと比較してみよう!)。IPv6は、IPアドレスの不足が絶対に起こらないように考えられたものだ。IPv6を利用すれば、個々のIoTデバイスに対しグローバルIPアドレスを付与することが非常に簡単になるので、効率的なピアツーピア通信が可能になる。

 IPはIoTにとって重要ではあるが、それが直ちに非IPネットワークの有用性を否定することにはならない。単に、「そうしたネットワークが使用される場合は、インターネットに接続するためにゲートウェイが必要になる」ということだけだ。ゲートウェイは、IP世界とIoTデバイスに使用されている通信技術との間を橋渡しする。

 例として、ZigBee IPゲートウェイを見てみよう。

 ZigBeeは低電力デバイス用の通信プロトコルだが、IPパケットを伝送できない。しかし、2013年3月にZigBeeアライアンスがZigBee IPをリリースしたことにより状況が変わった。ZigBee IPは低電力ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(6LoWPAN)上でIPv6送受を可能とするオープン標準規格である。

 図1に示したような組み込みの観点からIoTを見ると、デバイス相互をつなぐネットワークはIoTの一部分でしかない。6LoWPANは、圧縮ヘッダ形式でIPv6アドレスを伝送できるので、インターネット接続の能力を持つ。

 また、各デバイスにグローバルアドレスを持たせればピアツーピア通信が簡単になることからも、6LoWPANが他のパーソナルエリアネットワークに比べて優位になる。しかし、6LoWPANは特殊な形式でIPv6パケットを送るので、この圧縮IPv6ヘッダを標準のIPv6またはIPv4ヘッダ(つまり通常のインターネットサービスプロバイダが中継できる形式)に変換するには、余分なソフトウェア層が必要になる。

まとめ

 IoTデバイスに必要なソフトウェアは、その通信に対する要求条件によって決まる。先述の通信スタックのどれもが、デバイスに組み込まれたアプリケーション用も含むとなるど、相当大きなソフトウェア規模になる。こうしたソフトウェアの選択がIoTデバイスのハードウェア設計に大きく影響する。

 WSNノードを最小コストで構築するというのが業界の方向であり、そのためにマイコンと周辺機能を1チップに組み込むための開発が進んできた。ソフトウェアからの要求により、マイコンのフラッシュメモリおよびRAMに対する要求条件が厳しくなる。今後数年間は、WSNノードはまだコストが高すぎて広範囲な市場に受け入れられるには至らないだろう。

 トランジスタサイズの縮小などによるチップ設計の改善、およびコア設計自体の縮小化が相まって、いずれは低コストIoTデバイスが、現実的なものとして実現するだろう。

 筆者は、IoTデバイスにはインターネットプロトコルが必須だと確信している。これが、WSN技術には6LowPANが最適だと考える理由だ。

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