水晶やセラミック発振子を使った発振回路の設計方法は?:Q&Aで学ぶマイコン講座(2)(2/3 ページ)
マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。2回目は、実際の開発者の方からよく質問される「水晶やセラミック発振子を使った発振回路の設計方法」についてです。
発振回路の基本については、EDN Japanの「水晶発振器」活用の手引き(1):水晶振動子と発振回路の基本に詳しく記述されていますので、今回はマイコンのための発振回路に絞って、その設計方法を解説します。
発振回路の基本構成
基本構成の図1をもう少し詳しく解説します。
マイコンに内蔵されている素子の種類は、マイコンや発振回路によって異なります。例えば、RfもRDも内蔵している場合、Rfは内蔵しているが、RDは外付けしなくてはならない場合。逆にRDは内蔵しているが、Rfは外付けしなくてはならない場合、RfもRDも内蔵していない場合などです。
負荷容量のCGとCDは多くの場合マイコンには内蔵されていません。外付けするか、内蔵された発振子(発振子モジュール)を使用する必要があります。
実際には、これらの容量や抵抗に、ユーザーのプリント基板の持っている寄生容量や寄生抵抗も加わります。
水晶やセラミック発振子は、最初に周波数で選ぶと思いますが、選択した水晶やセラミック発振子には推奨回路(推奨定数)が説明書やカタログに記載されています。その推奨回路になるように上記の素子を選択します。
マイコンにこれらの素子が内蔵されている場合は、その抵抗値と容量をチェックする必要があります。
注意点
これらの素子の定数と発振子の特性が合わないと、発振不具合の原因になり、最悪の場合は発振しません。
実際の発振回路
次に、実際の発振回路の説明をします。
図2(a)は生成されたクロックをマイコンの内部に取り込む経路の例です。インバータの入力信号を取り込む場合(緑)と出力信号を取り込む場合(青)があります。これも各マイコンで異なりますので、マニュアルなどを参照してください。どちらの場合も一度、発振信号(クロック)をインバータなどの入力バッファで受けて、波形整形してからマイコンの内部に取り込みます。波形整形とは、電圧レベルをマイコン内部の電圧に合わせ、波形を正弦波から方形波(パルス)に変換することです。
図2(b)は低消費電力モードなどの際に、クロックを止める方法です。(b-1)はインバータの電源を切断する方法です。(b-2)と(b-3)は論理的にクロックを止める方法です。(b-2)はインバータの代わりにNANDを使って、入力の一方を”L”に固定して、出力を”H”に固定する例です。(b-3)はNORを使って、入力の一方を”H”に固定して、出力を”L”に固定する例です。これも各マイコンで異なりますので、マイコンのマニュアルなどを参照ください。
注意点
(b-1)の場合、インバータの出力端子をどれもドライブしなくなるので、ハイ・インピーダンス状態になり電位が不安定になります。もし、中間電位になると、(a)の図中の入力バッファに中間電位が入力され、貫通電流が発生し、せっかく低消費電力モードに入っても消費電流が期待値よりも下がらない場合が発生します。そのような場合の処理はマイコンメーカーに相談してください。(b-2)や(b-3)の場合は、”H”か”L”に固定され、入力バッファの入力レベルは固定されますので、貫通電流は発生しません。
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