水晶やセラミック発振子を使った発振回路の設計方法は?:Q&Aで学ぶマイコン講座(2)(3/3 ページ)
マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。2回目は、実際の開発者の方からよく質問される「水晶やセラミック発振子を使った発振回路の設計方法」についてです。
プリント基板のレイアウト
発振回路はノイズ源にもなりますし、ノイズが入ると内部クロックが乱れ、誤動作の原因になります。マイコンの回路で最もノイズに敏感な回路だといえます。
そのため、発振回路の配線は、極力短くし、部品(発振子、コンデンサ、抵抗)は極力マイコンの近くに配置するようにします。
図3は最も一般的な発振回路のレイアウト・パターン例です。必ずしもこのパターンにしなければならないということはありません。部品のサイズ、形状によって臨機応変に対応可能です。しかし、次の点は守らなくてはなりません。
- 部品は極力マイコンの近くに配置する(図4参照)
- 配線は極力短くする
- GNDのパターンをなるべく幅広く使い、発振子のグランドシールドとする
- 発振子によってはグランドシールドがない方がノイズ特性が良い場合があるので、その場合は調整が必要です。発振子のマニュアルを参照してください。
- 他の配線とのクロストークが発生しないようにする
- 特に、大電流ラインや信号が高速に変化するラインなどは注意が必要です。
実際の例として図5にSTマイクロエレクトロ二クスのマイコン「STM32」の推奨パターンを示します。
発振回路の評価方法
発振回路の評価方法にはいろいろな方法があります。インバータの増幅率の余裕度を評価する負性抵抗、高調波成分の評価、発振開始/停止電圧、発振開始(安定)時間などがあります。
詳しい評価方法は、発振子メーカーのWebサイトやテクニカル・ノートに詳しく説明されています。また、実際に具体的なマイコンと発振子の評価結果をWebサイトに掲載しているメーカーもあります。そのような資料をぜひ活用してください。
ユーザー自身が発振特性を評価する上で最も大事なことは、プリント基板の寄生容量や寄生抵抗も発振回路に含まれるため、これらの定数も含めて評価しなければならないということです。Webサイトに掲載されている評価結果はあくまで一般的な回路を使用したものなので、ユーザー個々のプリント基板の回路定数は含まれていません。
お勧めは、ユーザーの設計した発振回路のプリント基板ごと発振子メーカーに送って、評価をお願いすることです。大抵の発振子メーカーでは快く引き受けてくれます。
その他の注意点、参考情報
- プリント基板の汚れ
- 私の経験で、お客さまが量産ラインを移動したら、発振不良が多発した事例があります。原因は移動先のラインで、プリント基板の洗浄が不足していたため絶縁抵抗が低下し、発振特性が悪くなって発振しなくなったというものです。絶縁抵抗は数MΩの抵抗ですが、発振特性に影響を及ぼします。
- 発振波形の振幅について
- 近年、マイコンの低消費電力化に伴い、マイコンの発振回路の消費電力を低減するようになりました。そのため発振波形の振幅を必要最低限に制御することで、電力を抑える手法が取られています。そのような場合、発振波形はフル振幅ではなく、幅が狭い振幅になります。
- 発振検出回路
- 最近のマイコンの発振回路は、発振の安定を検出する回路が内蔵されており、発振が安定したと判断されると、フラグを立てる方式のものがあります。発振を検出する方法はカウンタが一般的です。クロックが生成されないとカウンタはカウントアップできません。そこで、発振検出用のカウンタを設け、カウンタの値を検出して発振の検出を行います。また、クロックで内部のコンデンサをチャージアップさせて、コンデンサの端子電圧が一定電圧になることでクロックを検出する方法もあります。
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