スマートメーターの低消費電力設計:電源設計(1/2 ページ)
世界規模で電力消費を削減し、電力使用量と請求情報を簡単に収集できると同時に、利用者が再生可能な電力買い取り制度の恩恵を享受するために、スマートメーターを本格展開することは重要な一歩です。ただし、スマートメーターの設計には標準が存在せず、設計が異なると電力供給方式も異なります。本稿は、スマートメーターの電源設計者が直面するいくつかの課題について考察し、ソリューションを紹介します。
電力会社は、増加する需要に可能な限り最低価格で対応するというプレッシャーを受け、多くの場合、リソースに関して厳しい制約が課せられます。例えば、従来の発電所は燃料価格の高騰に直面しており、多くの発電所は、太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギー型発電所(従来の燃料消費型発電所に比べて発電予測を立てにくい)によって置換/補完される可能性があります。同時に、電子製品は世代が進むごとに効率は高くなっていますが、それでも、現在の家庭で使用される電子機器の増加によって、電力網の負担が大きくなっています。
電力会社が電力供給を維持し、予期しない需要ピークが原因で「供給能力の限界近い」電力網が停止してしまう事態を防止する方法の1つは、顧客側の需要を能動的に管理することです。
例えば、柔軟な料金体系を採用して、ピーク時に使用量を抑えた利用者に恩恵を与えることがあります。顧客の施設内に設置したインテリジェントメーターを含むスマート・グリッドが、このような管理を実現するための鍵になります。供給企業と顧客施設内間での双方向通信に対応したスマートメーターを使用すると、料金をリアルタイムに更新し、スマートメーターのディスプレイ、スマートフォン、PC、タブレット端末などを通じて料金情報と使用状況情報を顧客に直接提供することができます。また、遠隔地からのオン/オフといった制御が可能になり、太陽光または風力発電装置を設置して電力グリッドに電力を還流させる家庭への料金支払いを評価するメカニズムを提供することもできます。
測定と報告
課金目的で計測精度を0.1%以内に維持することを要求する法的規制など、いくつかの一般的な要因はありますが、スマートメーターの設計を規制する規格はほとんど存在しません。望ましい通信テクノロジとして、電力線通信(PLC)を挙げることができます。PLCは、既存の電力供給インフラを活用するもので、主に欧州や中国で普及が期待されていますが、北米では家庭用の機器と街路に設置したデータ集線装置間の短距離通信用に低消費電力のワイヤレス・ネットワークが選択されています。
設置済みメーターのうち現時点でスマート化されているメーター(多くは、自動検針[AMR:Automatic Meter Reading]のためのスマート化されたもの)の割合は約16%にすぎないことが明らかになっています。そのため、エネルギー・メーター業界にとっては、電力会社と顧客間で高度な通信を可能にする最新メーター技術を提供できる大きな機会があります。ただし、課題も存在します。スマート・グリッドは電力会社の需要管理に役立ちますが、スマートメーター自体は一般に従来型の電気機械式電流計よりも多くの電力を消費します。後者は使用量を監視するために電束を使用し、消費電力は1W未満です。一方、最新のAMRメーターは動作時に5〜15Wを消費する場合があり、アイドル時には約2Wを消費します。将来のスマート・グリッドが数百万台のスマートメーターで構成されると考えると(例えば、フランスは今後5年間にわたって、毎年700万台のメーターを更新する計画)、累積的な追加電力需要によって、スマート・グリッド管理の利点が失われる事態を避けるために、省電力メーター設計への細心の注意が求められます。
スマートメーターの詳細
図1に、スマートメーターの主要な機能ブロックを示します。スマートメーターは、電源ボード、計測回路と基本的なメーター機能および接続/取り外し制御機能を含む高精度測定ボード、レジスタ・ボード、通信インタフェース・ボードで構成されます。レジスタ・ボードは通常、マイクロコントローラとメモリを実装する場所であり、ダイナミック料金設定を行うソフトウェアから、高度なセキュリティ・アルゴリズムまで、さまざまな「インテリジェンス」機能を提供します。
スマートメーターの消費電力を抑えるには、ロジック、ディスプレイ、通信の各機能全体にわたって、注意深い電力管理などの手法を組み合わせる必要があります。メーターは消費量データをリアルタイムに収集および記録し、比較的少ない消費電力で動作し、スケジュール設定された更新を定期的に受信するときのみ、または要求されたデータを表示するときのみ、通信サブシステムやディスプレイをウェイクアップさせます。
消費電力の増加という点で大きな不利益を生じることなく、より高速なデータ・レートを可能にするために、メーター製造業者はPLC送信手法などの通信手法を積極的に改善しています。CENELEC(欧州電気標準化委員会)は20年以上前にPLC専用の周波数帯域を定義し、エネルギーの分配および検針用として9k〜95kHzのAバンドを確保しました。B、C、Dの各バンドは95k〜148.5kHzの範囲をカバーしており、建造物内の使用と私的検針(例えばソーラー・パネルのような小規模発電機能によって生成されたエネルギーの監視)に割り当てられています。
過去、電子メーターは狭帯域シングルチャネルFSK(周波数偏移)変調を使用してAMRデータを送信していました。スマート・グリッドへの移行に伴い、データ・トラフィックの増加が予想されることから、消費電力を大幅に増やすことなく、より高速なデータ速度を達成する必要があります。高速データ・レートでデータ交換を短時間で完了させると、メーターは低消費電力モードを十分活用して、エネルギー需要を抑えることができます。
ほとんどの地域では、適切なデータ・レート増加を達成する電力効率の高い手法として、マルチチャネル位相シフトFSK(S-FSK)変調が選択されています。これは最大4組の通信ペアを使用し、1ペアあたり最大4800baudの速度を実現する方式で、1ペア当たり2400baudで動作するシングルペア狭帯域FSKよりもはるかに高速な通信をサポートします。この速度向上も、OFDMのような他の変調方式に比べて大幅に低い電力損失で達成されます。S-FSK変調のもう1つの利点はIEC 61334への準拠であり、既存の設置済み機器との互換性が保証されます。
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