SPICE応用設計(その7):W.C解析と設計品質:SPICEの仕組みとその活用設計(18)(2/4 ページ)
今回は、Spiceを少し離れて他のCAEツールのワーストケース解析について簡単に説明するとともに、今までの連載で触れてこなかった解析機能の中から有益と思われる一部の機能について説明をしていきます。
最適設計と安定性
最適設計を進めるとその検討過程で種々な特性が得られる時があります。例えば図2(a)に示すように「特性が1点でのみ高いが他の設計因子の影響を受けやすいもの、あるいは図2(b)のように「最大値は(a)の80%ぐらいしかないが他の設計因子の影響を受けにくいもの」ができる時があります。望ましいのは(b)の性能を100%まで向上させた特性ですが、現実問題としてうまくいくとは限りません。どちらを選ぶべきでしょうか?
設計品質安定化
限られた数量しか作成せず、常にその製品が管理下に置かれるのなら図2(a)の曲線のように特性優先でも良いかと思うのですが、私たちが設計するケースの多くは量産品です。
そして、市場に出荷された製品には入力変動、出力変動、温度変動、外来ノイズ、などのさまざまな外乱が製品に加えられます。
外乱も設計因子変動と考えれば"外乱に対して安定している"と言うことは、"設計因子が多少変動しても特性が安定している"ということですから設計者は図2(a)ではなく(b)のように特性を安定化させてから性能を向上させていくことを心がけねばばりません。
このような外乱因子に対して安定していることをロバスト性が高いと言い、このような設計をロバスト設計と言います。(Robust=堅牢性、安定性)
ロバスト設計のためには部品が出力に与える変動の状況を調べなければなりませんが、そのために有効なのがワーストケース解析に含まれている部品感度の情報なのです。
感度解析機能
PSpiceは既に述べたようにワーストケース解析に先立って偏差が設定された部品の1%変動に対応した出力の変動を調べます。ワーストケース解析はAC/DC/過渡の各解析に対して実行できますから主な特性に対して部品の感度を調べることができる反面、偏差を設定した部品の感度しか調べることができません。偏差の設定を忘れてしまえば見逃されてしまうのです。
また、大規模の解析になってくると偏差を設定することも結構な手間になります。何とかして自動で感度を調べることはできないのでしょうか?
Spiceの解析機能の中でそのために使えそうなのが感度(Sens)解析機能です。
ここではオリジナルのSpice3Fの感度解析機能を紹介します。
Spice3Fの感度解析は、回路の出力変数(節点番号)を指定することでDC解析とAC解析における部品の影響度(感度)を調べることができます。
ただし、ここでいう感度とはそれぞれの部品が1単位(1V,1A,1Ω,1F,1H)変化した場合の出力変数の線形化された理論的な感度であり、パーセント当りの変化量ではありませんので結果を読み取る時には注意が必要です。
感度解析を行う時のコマンド体系は表1の通りです。
OUTVAR:出力変数 例えばV(N001)、V(out)など
ND:OCT or DEC指定時 →区間のポイント数
ND:LIN指定時 →総ポイント数
FSTART/FSTOP:開始・終了時の周波数
PSpiceでは専用ウィンドで設定しますが、DC感度解析のみがサポートされています。
TopSpiceではDC Bias Point設定ウィンドの中の子ウィンドで設定します。DC感度解析のみがサポートされています。
LTspiceでは感度解析自体がサポートされていません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.