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SPICE応用設計(その7):W.C解析と設計品質SPICEの仕組みとその活用設計(18)(3/4 ページ)

今回は、Spiceを少し離れて他のCAEツールのワーストケース解析について簡単に説明するとともに、今までの連載で触れてこなかった解析機能の中から有益と思われる一部の機能について説明をしていきます。

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AC感度解析


図3 解析対象回路

 解析事例として図3のような回路網を取り上げます。この回路上の部品には偏差は設定してありません。

 この回路のV1→out1端子への伝達関数T(ω)の実効値は1式になります。


 ここで伝達関数|T(ω)|をR1で偏微分すれば2式のように、R1がV(out1)へ及ぼす感度を求めることができます。

 また、この他にも伝達関数を複素数のまま各成分をR1で微分(複素偏微分*1)することも考えられます。

*1)結果はREAL成分とImaginary成分に分かれて求まります。次の(e)はそのベクトル合成値です。

 また、前述の第2式はベクトル合成後に偏微分していますので複素偏微分ではありません。


 ではSpice3Fはどのように解析し、何をもって部品の感度としているのでしょうか? インターネットでACの感度解析について検索してみましたが、詳しい計算アルゴリズムの資料が見つかりませんでした。検証のためには考えられる計算方法と比較するのが良さそうです。

 考えられる感度の定義としては種々ありますが、図4にR1の感度として次の数字を示します。

(a)複素偏微分のREAL成分感度
(b)Spice3FのAC感度解析結果
(c)実効値の感度計算(第2式)結果
(d)PSpiceの過渡解析結果(1Ω変動前後の比較)からの感度
(e)複素偏微分のベクトル合成値
(f)PSpiceのAC解析結果(1Ω変動前後の比較)からの感度


図4 AC感度解析結果 (クリックで拡大)

 図4の結果からSpice3FのAC感度解析は(a)のREAL成分の感度を表示していることが見て取れます。
 少なくとも単純に実効値を求めて比較しているのではないとだけは言えるようです。

 また、図5に示すように各部品に偏差を設定していなくても、全ての部品についての感度が求まります。必要に応じて表示・確認すればどの部品が特性に対して高感度なのかは容易に求めることができます。(各定数の変動は1単位ですからパーセント表示に換算しなければなりませんが)


図5 Spice3F AC感度解析結果表示

 ここでc1_wとV1が何を意味するのかはインターネットにもヘルプファイルにも情報はありませんでしたので分かっていません。結果を表示させても意味のある値は表示されませんでした。

 しかし、商用ツールの多くがAC周波数特性の感度解析をサポートしていないのはなぜなのでしょう?

 「REAL成分の感度が正しくAC周波数特性の感度を表現していない」のでしょうか?

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