安価な冷却ファン制御回路:Design Ideas パワー関連と電源(1/2 ページ)
冷却ファンの制御回路としては、スイッチを使って単に低速と高速を切り替えるものや、デジタル制御による速度コントロール方式などがある。スイッチ方式はコストが安いが速度が大幅に変化することで発生する音が不快である。デジタル制御方式は高い性能を得られるが、回路コストも高い。そこでアナログ方式の冷却ファン速度制御回路を考えた。
オフィスや家庭に電子機器が増えるにつれて、冷却ファンの騒音が大きな問題になってきている。騒音は、冷却ファンの回転速度に比例する。周囲の温度が低ければ、冷却に必要な空気の流れ、すなわち冷却ファンの回転速度は低くてよい。ほとんどの時間、周囲温度は設計の上限値よりも低い。このため冷却ファンの回転は遅く、耳障りではない。
冷却ファンの制御回路としては、スイッチを使って単に低速と高速を切り替えるものや、デジタル制御による速度コントロール方式などがある。高速/低速スイッチ方式はコストが安い。しかし速度が大幅に変化することで発生する音が不快である。デジタル制御方式は高い性能を得られるが、回路コストも高い。さらにシステムには、シリアル・バスが必要になる。
そこで代替方法として、図1のような低コストで実現できるアナログ方式の冷却ファン速度制御回路を考えた。
この回路は、冷却ファンの駆動電圧と温度との関係が希望する直線関係になるように簡単に調節できることが特徴である(図2の曲線BとC)。実際に図2には、測定した温度を駆動電圧に対してプロットした。
図2の曲線Aは、アナログ温度センサー「MAX6605」の出力(VSENSOR)と、システム温度T(℃)との関係を示したものである。式で表現するとVSENSOR=0.009V/℃×T+0.744Vになる。曲線Bは、冷却ファンの駆動電圧VFANとシステムの温度Tとの関係を表す。最小フロア電圧は8V。斜線部分の関係式は、VFAN=0.114V/℃×T+6.86Vである。フロア電圧は、低い温度でも冷却ファンが回転できることを保証するために設けている。システム温度が10℃を超えると、駆動電圧は0.114V/℃の傾きで上昇し、45℃で最大値である12Vに達する。
ただしMAX6605の出力を単純に増幅しただけでは、8Vのフロア電圧を得られない。さらに冷却ファンの駆動電圧の傾きを得るのに必要な利得9.58(=0.114/0.0119)は、y軸上の切片を得るのに必要な利得9.22(6.86/0.744)と等しくない。すなわち、曲線Aを曲線Bに変換するためには、温度センサーの出力からオフセット電圧を引き、その結果に、ある定数を乗算しなければならない。図1にはこの演算を行う回路が含まれており、「オフセット減少」で示した点線を接続することで、演算を実行できる。なお「MAX6003」は基準電圧源ICで、出力VREFは3Vである。デュアル・オペアンプの一方(左側)は、斜線部分を形成し、もう一方はフロア電圧を生成するように働く。この2つのオペアンプの出力はトランジスタに接続し、pチャンネルMOSFETを駆動する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.