安価な冷却ファン制御回路:Design Ideas パワー関連と電源(2/2 ページ)
冷却ファンの制御回路としては、スイッチを使って単に低速と高速を切り替えるものや、デジタル制御による速度コントロール方式などがある。スイッチ方式はコストが安いが速度が大幅に変化することで発生する音が不快である。デジタル制御方式は高い性能を得られるが、回路コストも高い。そこでアナログ方式の冷却ファン速度制御回路を考えた。
抵抗値を求める方程式
図1の回路に使用する抵抗値は、以下の方程式を使って決める。ここで、R2はR1よりも十分に小さいと仮定する。R1は任意の適切な値とする。すると、以下に示す2つの式が成り立つ。
R2=R1(AVVTEMP0−VY−INTB)/[(AV−1)(VREF−VTEMP0+VY−INTB/AV)]
R3=R2(AV−1)
ここでAV=0.114/0.0119=9.58であり、希望する傾き(V/℃)とセンサーの傾きの比を表す。また、VTEMP0=0.744Vで、0℃における温度センサーの出力電圧、VY−INTB=6.86Vで、希望する温度曲線のy切片、VREF=3Vで、基準電圧である。
R1=301kΩと決めると、R2=3.158kΩ、R3=27.09kΩと求まる。1%の誤差の範囲でそれぞれ抵抗器を選択すると、3.16kΩと27kΩになる。
フロア電圧はR5=R6(VFLOOR−VREF)/(VREF)で計算できる。ここでR6は任意の適切な値でよい。希望する最小出力電圧はVFLOOR=8Vである。従って、R6=100kΩとすれば、R5=169kΩが得られる。
一方で、傾きの利得よりもオフセット利得のほうが大きな値を必要とする場合がある。この場合は、温度センサーのオフセット電圧を大きくする必要がある。例えば曲線Cは、VFAN=0.114V/℃×T+8.5Vで表される温度曲線で、傾きの利得AV=9.58は曲線Bと同じだが、必要とするオフセット利得は11.42(=8.5/0.744)と大きい。
そこで、図1中の「オフセット増加」で示した点線を接続する回路を使う。こうして接続した場合、R4=R1(VY−INTC/AV−VTEMP0)/(VREF−VINTC/AV)=20.41kΩとなる。ここでVY−INTCは希望する温度曲線Cのy切片で8.5Vとした。R1は301kΩと置いた。1%の誤差の範囲で抵抗器を選択すると、R4は20.5kΩとなる。
Design Ideas〜回路設計アイデア集
【アナログ機能回路】:フィルタ回路や発振回路、センサー回路など
【パワー関連と電源】:ノイズの低減手法、保護回路など
【ディスプレイとドライバ】:LEDの制御、活用法など
【計測とテスト】:簡易テスターの設計例、旧式の計測装置の有効な活用法など
【信号源とパルス処理】:その他のユニークな回路
※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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