ファンより先回り!――ユニット電源の修理(2):Wired, Weird(3/3 ページ)
EWS300電源の修理の続きを報告する。故障原因を突き止めたものの、顧客仕様のDCファンが手に入れられず、結局、修理が完了しなかった。今回は、標準品のDCファンとアタマを使って、何とか修理を終えようと思う。
ファンの回転信号がパルス出力の場合
おまけだが、ファンの回転信号がパルス出力の場合の追加基板も検討したので紹介しよう。図4に回路図を示す。
図4の左側にDCファンを接続し、右側は電源基板に接続している。この基板のコンデンサC1がパワーオン時にQ1のFETをオンさせる。その後はファンの回転パルスが入るので、コンデンサC2で立ち上がり信号を微分しQ1のFETをオンさせる。パルス信号が立下ったときはダイオードD3を通してセンサーのLow信号で直接出力を駆動させている。この3つの動作が重なって5V電源電圧が正常に出力されるはずだ。図5に基板の写真を示す。
手持ちのディスクリート部品で作ったので少し大きめの基板になった。両面基板を使い、表面実装部品で作ればケーブルの途中に入る小さなサイズになるだろう。
動作確認
この基板の動作をオシロスコープで確認した。出力波形を図6に示す。
図6の波形はDCファンのパルス入力を受けているときの、電源基板への出力波形である。出力波形は0V(FET)と約0.8V(ダイオード+センサー電圧)でオン出力している。ファンのパルスの立ち上がり信号を微分してFETがオンするが少しFETの動作時間の遅れがあり3V程度のひげの波形が見える。立下り時はオン電圧とダイオードの電圧が足されて0.8V程度に電圧が上がっている。この基板ではファンの回転を止めるとこのパルス信号がなくなりファンのセンサー出力は12Vになり、出力電圧も12Vになった。DCファンの回転が止まったら出力がオフしたので、EWS電源に入れてもまず問題なくインターロックが動作するだろう。
最後に日本製のEWS300-5の電源の修理完了品の写真を図7に示す。
EWS電源で300W以上のものは日本製も海外製もほぼ同じ構成の電源であり、完璧に近い安全対策が実施されていた。この電源では最初に寿命になるのはDCファンであり、専用のファンが入手できればファンを交換するだけでほぼ修理は完了できる。
しかし実装されているファンは顧客仕様品のため一般では入手することはできなかった。また市販のDCファンでロックセンサー付きのものは電源投入時のファンの回転出力が出される時間が遅くアラーム感知され5V電源がシャットダウンされてしまった。このときは図1または図4の回路図を参考にして追加基板を製作しDCファンのコネクタへ追加すればよい。
いろいろな工夫で対応を
今回の修理でEWS電源のシャットダウン回路の機能をオシロスコープで確認できたので、電源の修理にさらに自信が付いた。なお修理品では生産中止されている部品も多く、専用部品を調達することはかなり難しい。このため修理品が機能を果たせるようにするには、いろいろな工夫を行って電源を改造するしかない。また追加する基板は小型に作らないと実装スペースが確保できないことがある。流行の表面実装部品を使いこなすことも修理作業にも役立つだろう。
DC電源は電気機器の基本部品であり、読者も動かない電源に遭遇することがあるだろう。修理の仕事では電源の不良が過半数を占める。今後もいろいろなDC電源の修理例を報告していくつもりだ。
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