ケーブルの容量からケーブル長を算出:Design Ideas 計測とテスト
容量測定機能を持ったマルチメーターを用いて、どこにも接続されていない(オープン回路)のケーブル長を測定できる。ペア線同士の容量や芯線とシールド間の容量は、ケーブル長に比例するため、単位ケーブル長当たりの容量が分かれば、オープン回路のケーブル長は計算できる。
容量測定機能を持ったマルチメーターを用いて、どこにも接続されていない(オープン回路)のケーブル長を測定できる。ペア線同士の容量や芯線とシールド間の容量は、ケーブル長に比例する。すなわち、単位ケーブル長当たりの容量が分かれば、オープン回路のケーブル長は計算できる。
単位ケーブル長当たりの容量を求めるには、パーツ店で長さが既知のケーブルを購入し、マルチメーターでケーブルの容量を測定すればよい。マルチメーターは、容量測定をする前に、必ずゼロ校正を実施する必要がある。ゼロ校正をするためには、マルチメーターを容量測定機能に設定する。この際、リード端子には何も接続しない。マルチメーターのゼロ校正が終わったら、購入したケーブルの容量を測定する。測定した容量をケーブル長で割り算して、単位ケーブル長当たりの容量を求める。
単位ケーブル長当たりの容量を求めた後、測定対象のケーブルに電圧や信号が供給されていないことを確かめて、オープン回路のケーブル全体の容量Cを測定する。ケーブルの長さは、容量Cを単位ケーブル長当たりの容量で割り算して求める。
ケーブル長の測定レンジと測定分解能は、マルチメーターの測定レンジと測定分解能に依存する。マルチメーターの最小測定レンジは10nFのものが多い。このレンジでの分解能は10pFである。マルチメーターの測定レンジと測定分解能は通常、10倍の値刻みで変更できる。高い測定レンジを選択すれば長いケーブルが測定できる。しかし、表1に示すように、測定分解能は10倍の値刻みで低くなる(305m/1000フィートを超えるようなケーブルを測定する場合には注意を要する)。
ケーブルの形式 | 実測した ケーブル容量 (nF) |
購入した ケーブルの全長 (m/フィート) |
単位ケーブル長 当たりの容量*3) (pF) |
測定分解能 (mm/インチ) |
測定レンジ (m/フィート) |
---|---|---|---|---|---|
より対線 (18ゲージ*1)) |
41 | 335/1100 | 37.3 | 818/32.2 | 818/2682.9 |
6-3 SJ | 0.1 | 1.52/5 | 20 | 152/6 | 152/500 |
カテゴリー3の電話線 (PVC*2)被膜) |
21.6 | 305/1000 | 21.6 | 1411/55.56 | 1411/4629.6 |
カテゴリー3の電話線 (難燃被膜) |
22.1 | 305/1000 | 22.1 | 1380/54.3 | 1380/4524.9 |
14-2 NMB | 5.26 | 76.2/250 | 21 | 145/5.7 | 145/475.3 |
スピーカー線 (16ゲージ) |
0.98 | 9.14/30 | 32.7 | 93.2/3.67 | 93.3/306.1 |
スピーカー線 (18ゲージ) |
0.91 | 9.14/30 | 30.3 | 100/3.96 | 100/329.7 |
スピーカー線 (24ゲージ) |
1.69 | 22.9/75 | 22.5 | 135/5.33 | 135/443.8 |
ツイン・リード線 (20ゲージ) |
0.68 | 30.5/100 | 6.8 | 448/17.65 | 448/1470.6 |
RG-6 | 0.47 | 7.62/25 | 18.8 | 162/6.38 | 162/531.9 |
RG-8 | 29.5 | 103/4.07 | 103/339 | ||
RG-25 | 50 | 61.0/2.4 | 61.0/200 | ||
RG-59 | 21 | 145/5.71 | 145/476.2 | ||
測定分解能と測定レンジは、マルチメーターの測定分解能と測定レンジを単位ケーブル長当たりの容量で割り算した値を掲載した。 *1)AWG(American wire gauge)で定められたケーブルの太さの規格。芯線の直径で定義されている。例えば、20ゲージは直径0.8128mm *2)ポリ塩化ビニル(polyvinylchloride) *3)ケーブル長が0.305m(1フィート)当たりの容量 |
表1の下段3列以外は、単位ケーブル長当たりの容量を実測してから全長を計算した。下段3列は同軸ケーブルのデータシートから転記した。
Design Ideas〜回路設計アイデア集
【アナログ機能回路】:フィルタ回路や発振回路、センサー回路など
【パワー関連と電源】:ノイズの低減手法、保護回路など
【ディスプレイとドライバ】:LEDの制御、活用法など
【計測とテスト】:簡易テスターの設計例、旧式の計測装置の有効な活用法など
【信号源とパルス処理】:その他のユニークな回路
※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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