300mAでも高いQ値を維持、積層インダクタ:TDK MLJシリーズ
TDKは2015年5月、NFCモジュールやその他の一般電子機器向けに積層インダクタ「MLJ1608」シリーズを発表した。100mA〜300mAの交流電流が流れても、巻き線コイルと同等レベルのQ値を確保していることが特長だ。
TDKは2015年5月19日、1.6mm×0.8mm(1608サイズ)の積層インダクタ「MLJ1608」シリーズを開発したと発表した。NFCモジュールをはじめ、低出力のDC-DCコンバータ、その他一般電子機器などの用途に向ける。サンプル価格は1個当たり30円で、既に生産を開始している。
MLJ1608では、新たに開発したフェライト材料を使用したことと、電極を厚くしたことにより、低損失・低抵抗化を図った。主な仕様は、インダクタンスが160nH〜250nH(25MHzにおいて)、直流抵抗が0.12Ω〜0.40Ω、定格電流1*1)が550mA〜750mA、定格電流2*2)が400mA〜700mAとなっている。
*1)定格電流1:インダクタンス変化率に基づく場合(公称値から10%低下)
*2)定格電流2:温度上昇に基づく場合(温度上昇25℃)
今回のシリーズがメインターゲットとしているNFC回路には、コントローラICとアンテナの間にLCフィルタがある。ここに用いられるコイルには、NFCが通信に利用する13.56MHzでの高いQ値(High-Q)や、狭交差インダクタンスが求められる。さらに、通信時には100mA〜300mAの交流電流が流れるので、通電状態でも安定した特性を維持できることも重要になる。MLJ1608は、TDKの従来品の「MLFシリーズ」に比べて、300mAの交流電流が流れても、巻き線コイルと同等レベルのQ特性を確保しているという。また、磁気シールド効果によって磁界の漏れが少なく、フィルタ回路においてクロスカップリングを抑えることができるという。TDKは「狭交差対応、磁気シールド、低損失、大電流対応と、NFC回路に要求される特性に、非常に適している」と話す。
なお、さらなる小型化に向けて1.0mm×0.5mm(1005サイズ)の「MLJ1005」シリーズも開発中だ。
NFC回路には当初から、MLFシリーズがリファレンスとして採用されてきた。だが、TDKによると、通信用チップに流れる電流が増加していく中、大電流に対応できる巻き線コイルが採用されるようになってきたという。今回MLJ1608を市場に投入することで、小型化を図りやすい積層インダクタの採用を推し進めたい考えだ。
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