コンプライアンステストと最終検証:覚えておきたい「電源測定」のきほん手順(3)
プロトタイプ電源の測定が一通り終われば、コンプライアンスなどに適合しているかどうか、最終的なチェックを行いましょう。
前回(第2章)では、パワー段の制御ロジックとスイッチング特性のチェック方法、損失を最小に抑える方法、必要な仕様に対する適合性の確認方法について説明しました。
コンプライアンステスト
プロトタイプが完成し、動作した後は、設計した回路が地域の電力線の規格に適合していることを確認します。ほとんどのAC-DC電源は壁コンセントからのACで動作するように設計されており、IEC 62301待機電力、ISC 61000-3-2電流高調波規格などの厳しい消費電力、電力品質の規格に適合する必要があります。このような規格への適合性は、初期の設計段階でテストする必要があります。また、電流高調波テストで使用するパワーアナライザは、IEC 61000-4-7規格の測定方法に適合している必要があります。
小さく、歪みのある待機電力の測定では大きな誤差になる原因となりますので、接続が間違っていないことをダブルチェックします。ボルトメータのチャンネルは電流シャントのソース側に接続します。こうすることで、ボルトメータのインピーダンスに流れる電流を測定することを避けられます。
EMI/RFIテスト
EMI(電磁妨害)とRFI(無線周波数妨害)のテストは、その難しさとコストの問題から、設計の初期段階では無視されがちです。しかし、後になって予想しない結果に驚いたり、納期遅延などの問題が発生したりすることがあるため、このプロセスは無視できません。不必要な基板の回収やスケジュール遅延を防ぐためにも、設計の初期段階におけるEMC問題をテストすることを習慣付けてください。こうすることで、不要な基板回収やスケジュール遅延を防ぐことができます。
幸い、EMIのテストは素早く、簡単に行えます。スペクトラム アナライザとあらかじめ設定されたEMIコンプライアンス マスクがあれば、プログラム後半で製品をテストサイトに持ち込む前にプリコンプライアンステストを実施して、事前にEMI問題を把握することができます。ミックスド ドメイン オシロスコープ(MDO)と内蔵のスペクトラムアナライザ、近接界プローブを使用すると、図1に示すように簡単にEMIを特定できます。オシロスコープと回路図があれば、スペクトラムのピークが測定でき、根本原因を推定できます。
基本テスト手順を繰り返そう
最初のプロトタイプを全てテストしたら、次はオーバードライブと次期改訂版を考えます。再確認として、全てのテスト手順を繰り返します。全てのチェックが終わったら信頼性をチェックします。電源の全ての入力構成でテストします。これは、ユニバーサル入力電源では特に重要です。次に、無負荷から全負荷までスイープし、考えられる全ての動作条件で電源をテストします。最後に、環境試験室で寿命テストを行い、現実における設計性能をチェックします。
このように、設計プロセスにおける測定手順を実行することで、優れた効率、信頼性、規格に適合した電源を市場に送り出すことができます。
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