USB 3.1/Type-Cの受信耐性評価:USB Type-Cの登場で評価試験はどう変わる?(4)(3/5 ページ)
今回は、「USB 3.1/Type-Cの受信耐性評価」に関して、シンボルエラー測定(SER)が可能なビットエラー測定器(BERT)を用いた受信性能テストの方法について述べる。
2:ループバックモードへの設定方法
Rxテストを行うためには、DUTをループバックモードに設定する必要がある。USB3.1仕様では、リンクトレーニングの途中でループバックモードに遷移する方法が定められている。これに準拠した信号を信号源側で作り出せればDUTをループバックに投入することができる。実際のコンプライアンス・テストにおいても、DUTは信号源側からの指示に反応してループバックモードに入ることが求められており、もしループバックに入らない場合は即Fail判定となるので注意が必要だ。
しかし、実際にはDUTの設定や挙動のわずかな違いなどにより、信号のパターンやタイミングなどを微調整しないとループバックに入らないこともある。特にUSB3.1のような新しい規格に対応した初期のDUTではよくあることである。ただループバック投入シーケンスを調整するためには、USB3.1の仕様と信号源の操作方法の両方に精通している必要があるため、その作業は多くのエンジニアにとっては簡単とはいえない。
そこでキーサイトではループバック投入シーケンスを簡単に作成できるツール「USB Link Training Suite」を用意している。GUIでの直感的な操作により、ループバック投入シーケンスを簡単に作成・編集できる。作成したシーケンスはファイルに保存しておき再利用できるため、DUTごとに最適な設定をすぐに呼び出して使用することが可能になっている。
3:BERTのレシーバーの性能
前に述べた通り、Rxテストでは、「信号源から送った信号パターン」と「DUTから返信される信号パターン」を比較してエラー検出をする、というプロセスが繰り返される。見落としがちだが、実はエラーが検出される理由は2種類あることに注意する必要がある。
1つは、DUTが実際に受信エラーを起こしている場合である。DUTが信号パターンを正しく認識できず、パターンのどこかのビットが反転してしまった、という状況である。Rxテストで検出すべきエラーはこちらである。
もう1つは、BERTのレシーバーが受信エラーを起こしている場合である。DUTは正しくループバックしている場合でも、DUTの信号品質がよくない場合、またDUTからBERTへの経路で信号が劣化している場合には、BERTのレシーバーが正しくパターンを認識できずエラーと判定される場合がある。要するにこのエラーは誤判定であり、正しくテストできていないということになる。特にUSB3.1 Gen2は10Gbpsという非常に高速な信号を扱うため、ちょっとしたことで信号品質の劣化が起きやすい。よって、DUTのTxからBERTのレシーバーに至る経路は、できるだけ信号品質を良好に保つ必要がある。
キーサイトのJ-BERT M8020Aは、劣化した信号でも正しく受信できるように、イコライザ付きレシーバーを搭載している。イコライザの特性はUSB3.1 Gen1およびGen2の両方のテストに対応可能である。DUTの筐体内配線が長い場合など、ある程度の信号劣化が避けられないが、そのような場合でもイコライザで補償することで正しくエラー判定をすることができる。イコライザ機能がないBERTの場合は、DUTとBERTのレシーバーとの間に、別途リピータなどを入れて対処する必要がある。
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