並列接続IGBTの駆動:ゲート抵抗は共有すべきか否か(1/3 ページ)
IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を並列接続する場合、ゲート抵抗を共有させるか、させないか、という「ゲート間の接続」に関する議論が存在します。何を根拠に、ゲート抵抗の構成を決めるべきかを考えていきましょう。
ハイパワー電子機器の需要の拡大とともに、高電圧かつ大電流の負荷を駆動する必要が生じています。スイッチング方式のコンバーターにおいて高電圧と大電流の両方を達成するためには、この種のアプリケーションに適したIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)のような素子を並列に接続してスイッチングさせることが必要です。
複数のIGBTを並列接続する際に考慮すべきことはいくつかあります。その1つは「ゲート間の接続」です。並列接続のIGBTでは、1つのゲート抵抗を共有できる一方で、個別にゲート抵抗を組み込めます。さらには、それらを組み合わせた構成も使用できます。この「ゲート間の接続」に関するほとんどの議論では、個別にゲート抵抗は必須であるとの見解が示されています。ただし、ゲート抵抗の共有を強く主張する見解もあります。
最初に考慮すべき事項は「最大駆動電流」
並列接続IGBTの駆動方式を判断する上で最初に考慮すべき事項は、最大駆動電流です。並行接続されたIGBTの総ベース電流を十分に駆動するドライバがなければ、IGBTごとに個別のドライバが必要です。
この場合、各IGBTで個別のゲート抵抗を入れる必要があります。ほとんどのドライバは、数十ナノ秒以内でターンオン/ターンオフのパルスを切り替えるのに十分なスピードを持っています。これは、IGBTのオン/オフのタイミングに非常に適しています。というのは、一般的に数百ナノ秒でスイッチングが行われるためです。
1つのドライバを共有する場合、ゲート抵抗の組み合わせに議論を集中させることができます。個別にゲート抵抗を入れることの欠点は、ターンオン/ターンオフ時のゲート駆動電圧に偏りが起こることがあり、タイミングのミスマッチが増加する可能性があることです。ゲート抵抗末端のパルスが全く同じであったとしても、ゲート抵抗および、回路基板上のインピーダンスを合わせたIGBTのゲート容量の変動により、IGBTのゲートに立ち上がり/立ち下りの変動や遅延時間が生じます。それでも多くの人は、個別のゲートレジスタを使用することを主張します。というのは、IGBT間の発振の可能性が最小限に抑えられるからです。
発振は、基板レイアウトの浮遊インダクタンス(主にエミッター周辺回路)とIGBTのゲート静電容量およびゲインが組み合わさって生じます。エミッタ周辺回路においてインダクタンスを最小限に抑えれば、寄生要因による発振を取り除く上で大きな役割を果たします[1〜4]。
共通のゲート抵抗を使えば、インピーダンスパスにおける寄生要因の変動による違いをごくわずかに抑えつつ、両ゲートが特定時間に同じ電位を達成できるようになります。これにより、スイッチング時により偏りのない電流を流すことができ、IGBT間の損失の差異を抑えることができます。ゲートレジスタが共有であるか個別であるかは、直流電流のレベルに影響しません。というのは、すべてのIGBTゲートは、最終的にゲートバイアス電圧までチャージされるためです。共通のゲート抵抗の使用が推奨されることもありますが、個別のゲートレジスタほど一般的な指針とはなっていません[5]。
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