並列接続IGBTの駆動:ゲート抵抗は共有すべきか否か(3/3 ページ)
IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を並列接続する場合、ゲート抵抗を共有させるか、させないか、という「ゲート間の接続」に関する議論が存在します。何を根拠に、ゲート抵抗の構成を決めるべきかを考えていきましょう。
共通、個別ゲート抵抗を組み合わせた回路
デバイス間の発振の可能性は、システムの設計およびプロトタイプの作成が終わるまで分からないため、個別、共有および、その2つを組み合わせたゲート抵抗を使うことに対応できるゲート回路を使用することをお勧めします(図4参照)。
混合方式では、実際の回路の寄生インピーダンスに基づいてゲート抵抗の値を柔軟に調整できます。共通の抵抗においてある程度の発振が観察された場合、ゲートインピーダンスの抵抗成分は、共通の抵抗素子および個別の抵抗素子に分けることができます。
最適な性能を得るためには、個別の抵抗は、発振を抑えるために、最大限のゲート抵抗値を占めます。この回路は、一連の動作および環境条件においてゲート抵抗の組み合わせで調整できます。
この方法により、ゲート電圧は、ターンオンおよびターンオフにおいて最大限同じ電位となるようになりますが、個別の抵抗は、デバイスが互いに発振しないように必要に応じて追加できます。
ハイパワーデバイスの並行接続のアプリケーションにおいて、最適化を図ることにより、システムの信頼性と性能を最大限に高めることができます。ここで議論したゲート駆動の考察事項は、ハイパワーデバイスのスイッチングシステムを最適化させる要因の1つです。
参考文献:
[1]「Connecting IGBTs in Parallel(Fundamentals)」(シーメンスアプリケーションノート)
[2]「Application Characterization of IGBTs」(International Rectifier、AN-990第2版)
[3]「Parallel Operation of IGBT Discrete Devices」(2006年、IXYS、IXAN0058)
[4]「Paralleling of IGBTs and Diodes of One Power Module−Pushes Power Capability」(第4号 2008年;Power Electronics Europe, Vincotech)
[5]「Current Sharing and Redistribution in High Power IGBT Modules」(2001年5月;John C. Joyce, p. 52)
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