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アナログ技術の継承は難しいWired, Weird(3/4 ページ)

今回は、3相モーターのトルク制御をリニアに行うアナログ回路の修理の様子を報告したい。修理依頼主への配慮により、詳細は明かせないのだが、アナログエンジニアであれば、恐らく感銘を覚えるであろう素晴らしいアナログ回路だった。

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なぜ、絶妙なトルク制御が行えるのか

 では、どのような回路でこの微妙なモーターのトルク制御が行われるのだろうか、図1に戻って説明しよう。


図1:3相モーターのトルク制御を行う機器の基板 【再掲】 (クリックで拡大)

 図1の左下のトランスはAC200Vのトランスで、二次側にAC18Vを生成していた。これをダイオードブリッジと電解コンデンサーで全波整流し、中央左側の三端子の15Vレギュレーターでオペアンプの電源を生成していた。次に中央下にある14ピンのICが4回路入りのオペアンプだ。このオペアンプで近接センサーへ供給するクロックが生成されており、その周波数は右上にある四角の可変抵抗で調整され、ペイントロックされていた。そしてこのクロックが白のコネクターを通して近接センサーへ供給されていた。

 使用されていた近接センサーは磁気を使った近接センサーで、発振コイルと共振コイルの2つが内蔵されていた。近接センサーはセンサーの近くに金属がなければ発振コイルの磁界が共振コイルに全て吸収されてセンサーの出力レベルが最大になる。逆にセンサーと金属との接触面積が大きくなると磁界が金属に吸収されて共振コイルの出力は最小になる。つまり磁気センサーと調整金属の接触面積に反比例して磁気センサーの出力信号レベルが変化するように動作していた。

ユニ・ジャンクション・トランジスタ(UJT)を使用

 3相モーターのS相の出力は図1の中央上にあるが、放熱板に実装されたトライアックが使用されていた。トライアックのトリガーはその右側のパルストランスで行われ、パルストランスの制御は基板の右上にある3端子のUJT(ユニ・ジャンクション・トランジスタ)が使用され、UJTの発振周期をオペアンプの出力の大きさで制御していた。つまりVCO制御だ。UJTの名前を聞いて理解できる人はかなりのベテランだと思う。筆者も40年ほど前に使った記憶がある。近接センサーから出力される信号のレベルをオペアンプで判定する。判定レベルはオペアンプの左側にある丸型の可変抵抗で設定されていた。

 糸巻き機器の基板の全体の動作を説明しよう。近接センサーからの信号レベルが大きい(金属との距離が離れている)時はオペアンプの出力レベルが高くなる。これでUJTが短い周期で発振し短時間でトライアックがオンして3相モーターのトルクを最大にする。磁気センサーからの信号のレベルが小さい(金属との接触面積が大きい)時はオペアンプの出力が低くなる。これでUJTが長い周期で発振してトライアックがオンするまでの時間が長くなり、3相モーターのトルクが最小になる。

 なお、金属板と近接センサーの重なりが大きくなるにつれて、オペアンプの出力が下がっていくが、この時にはUJTの発振周期が少しずつ長くなり、3相モーターのトルクを少しずつ小さくしていくテクニックが隠されていた。またオペアンプの入力に微分回路があり近接センサーの信号入力が大きくなる方向(糸巻きの終端が終わったとき)へ変化したときに、即座にオペアンプの出力を高くして3相モーターのトルクを最大にしていた。これは巻き方向を変更した直後にモーターのトルクを最大にして、糸がほどけないように制御していると思われた。

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