Google傘下が主導した無線規格「Thread」とは:IoT時代の無線規格を知る【Thread編】(1)(1/3 ページ)
家庭やオフィスに無線メッシュネットワークを形成し、丸ごとインターネットに接続できる低消費無線通信の新規格「Thread」。Threadは、Wi-FiやBluetoothなどの既存の無線規格で実現することが難しいIoTの世界を実現する。今回は入門編として、Threadの基礎を紹介する。
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今や耳にしない日がない「IoT(モノのインターネット)」。あらゆるデバイスやセンサーがつながる時代を迎え、その数は2020年に500億個に達するといわれている。そのIoTで、ホームネットワーク向けに注目を集める無線規格が「Thread」(スレッド)だ。Google傘下のNest Labsが主導してきたThread、今回は入門編を紹介する。
ホームネットワーク向け無線規格
Threadとは、「Thread Group」がホームネットワーク向けに策定した通信規格である。2014年7月にSilicon Labs、Google傘下のNest Labs、Yale Security、Samsung Electronics、Freescale Semiconductor(現NXP Semiconductors)、Big Ass Fans、ARMの7社がThread Groupを設立。2015年7月にThread1.0を発表している。
詳しくは後述するが、Threadには他の無線規格とは違う以下のような特長がある。
- メッシュネットワーク
無線機器を網目のようにつなぐメッシュネットワークを自己形成することで、通常では電波が届かない場所への通信を可能にする。ネットワーク内のどの機器が故障しても、バックアップする仕組みであり堅牢である。 - ネイティブIP(インターネットプロトコル)通信
インターネットのIP通信網をそのまま無線通信に使用する。 - ユーザーにやさしいネットワーク管理機能と高セキュリティを両立
ネットワークに新しい機器が参加する際のプロセスが工夫されており、IoTでは特に重要度を増しているセキュリティ対策も施されている。 - 長期間の電池駆動も可能
Threadのエンドデバイスは自己の都合でスリープ状態に居ることができるため、長期の電池駆動が可能である。
Thread Groupは設立から急速に規模を拡大しており、2016年4月時点で220社を超える企業が参加メンバーに名を連ねる。中でも、ホームコントロール製品大手のSomfy、ホームセキュリティ製品大手Tyco、Qualcomm Technologies、照明製品大手OSRAMが2015年にBoard of Directorに加わり、中心メンバーとして活動している。
1年でThread 1.0をリリースできた背景
Thread Group設立後、わずか1年で最初の規格仕様をリリースできたのには、理由がある。図2にネットワークスタックとThreadがターゲットとするレイヤーを示す。
このように仕様のターゲットをOSI参照モデルのネットワーク層、トランスポート層に定め、新たな技術開発を行わずIETF(Internet Engineering Task Force)で既に標準化が完了した技術を採用することで、短期間の仕様策定完了を実現したのである。
Thread Groupの取り組みは、仕様策定だけではない。Thread Groupでは認証用のテストハーネスを用意して、相互接続性を確保する取り組みも実施されている。2016年内には認証取得製品は200種に迫るものと見込まれる*)。
*)Thread Groupの詳細は、Webサイトが充実している。仕様書はメンバーのみが入手できるが、技術的な内容を記したホワイトペーパーや動画コンテンツも用意されるなど、必要な情報がそろっている。
また、ZigBeeと同じ物理層(IEEE802.15.4)をベースに規格化され、「EM358x」や「EFR32MG」(Silicon Labs製)のように既存のデバイスが使用できる特長を持つ。
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