GaNに対する疑念を晴らす:GaNにはGaNの設計を(3/4 ページ)
新しいMOSFET技術が登場すると、ユーザーは新しいデバイスを接続してどの程度効率が改善されたかを測定します。多くの人が既存の設計のMOSFETをGaNに置き換える際にもこれと同じ方法を使ってしまい、性能の測定結果に失望してきました。GaNの本当の利点を引き出すには、通常、システム設計を変更しなければなりません。GaNを既存のMOSFET技術に対する完全な互換品(ドロップイン置換品)と見なすのではなく、さらなる高密度・高効率設計を実現する手段と捉えるべきです。
過電圧事象への対処
GaNトランジスタに関するもう1つの誤解は、Si-MOSFETから引き継がれたものです。Si-MOSFETが最初に市場に登場した時、エネルギー能力が非常に低く、過電圧事象ではオフ状態のデバイスに強制的に最大システム電流を流していました。設計者がデバイスを改良し過電圧事象に耐え得るようにするのに何年もかかりました。しかし、他のシステム性能上の利点があるため、設計者はSi-MOSFETを使い続けてきたのです。
今日の第1世代GaNパワートランジスタにも同様の状況が存在します。これらのトランジスタではシステムからの高エネルギー変動をシャントする方法に頼るべきではありません。実際に、Si-MOSFETでも、データシート上のアバランシェエネルギー値からは、応用回路のデバイスに十分な保護が与えられていると認知されます。これはユーザーに誤った安心感を与えました。実際のところ、定格アバランシェエネルギーは、ほとんどの場合、ユーザーの使用条件におけるデバイスの能力を反映していません。
同様に、GaNトランジスタでは、ラインのサージや、システムに余分なエネルギーを加えて高電圧変化を引き起こす可能性がある他の事象を抑止するよう配慮する必要があります。ただし、この点については昨今のGaNトランジスタはSi-MOSFETよりも有利です。実際の降伏電圧は定格安定状態電圧よりもはるかに高くなります。すなわち、デバイス破壊が起こることなく、はるかに高い過渡電圧を許容できることを意味します。注意深い設計では、システムに過渡サージサプレッサーを含めるだけでなく、グランドに対するシステムの容量を考慮し、同時にGaNトランジスタのドレイン-ソース間電圧の上昇に必要なエネルギーにも配慮しています。
高速スイッチングを生かすための配慮を
GaNトランジスタの主な利点の1つがスイッチング速度です。ただし、この性能を引き出すためのシステム面に配慮しないと、GaNの利点を生かすことはできません。GaNトランジスタでは高速エッジレートを実現しているため、システム設計者はスイッチング周波数を大幅に上げることができます。寄生インダクタンスは常にスイッチング回路に影響を与えますが、エッジレートとスイッチング周波数が上昇すると重要度が高まります。高速エッジレートでは、高周波数の高調波成分が含まれるため、伝導性または放射性の放射電磁干渉(EMI)として伝搬されるリスクが増大します。伝導EMIに対するフィルターは、既存の設計で十分と思い込まずに、パワートランジスタと周辺回路の組み合わせに応じて適切に調整する必要があります。放射EMIを低減するために、スイッチングノードは可能な限り短くかつ幅広くしなければなりません。
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