GaNに対する疑念を晴らす:GaNにはGaNの設計を(4/4 ページ)
新しいMOSFET技術が登場すると、ユーザーは新しいデバイスを接続してどの程度効率が改善されたかを測定します。多くの人が既存の設計のMOSFETをGaNに置き換える際にもこれと同じ方法を使ってしまい、性能の測定結果に失望してきました。GaNの本当の利点を引き出すには、通常、システム設計を変更しなければなりません。GaNを既存のMOSFET技術に対する完全な互換品(ドロップイン置換品)と見なすのではなく、さらなる高密度・高効率設計を実現する手段と捉えるべきです。
総インダクタンスを最小化する
高速スイッチングトランジスタのパッケージの寄生インダクタンスは、電力変換効率に大きな影響を与えることが判明しています*)が、PCBレイアウトも同様に重要です。デバイスのスイッチング性能を最適に制御するよう、電源ループとドライブループの総インダクタンスを最小化しなければなりません。これらのインダクタンスの例を図1に示します。
*)Liu, Xiucheng Huang, Wenli Zhang, Fred C. Lee, Qiang Li, Center for Power Electronics Systems, The Bradley Department of Electrical and Computer Engineering, Virginia Polytechnic Institute and State University, APEC 2014.
寄生インダクタンスが最小で高速スイッチング周波数を達成できる場合、他の構成部品を見直して変更することができます。スイッチング周波数が高いと、一般的にトランスやインダクターの磁気コアを小型化できるので、システムの電力密度を上げるのに有効です。同じ材料と製造方法をより多くの回路に適用できれば、磁性部品のコストは下がります。システム要件に適合する限りシステムの容量要件も低減できますが、単純な構図にはなりません。例えば、ホールドアップ時間要件が存在する場合、今度は最小容量が必要になるのです。
寄生インダクタンスを最小値まで低減して周辺回路を設計すれば、スイッチング事象をより短くし、抑制することが可能です。これにより、最終用途の効率から高速でスイッチングするGaNトランジスタの十分な利点を確認できます。
シリコンの限界をGaNで突破できる!
GaNパワートランジスタを使用すれば、シリコンの限界を超えて設計を深化させることが可能です。システム・スイッチはもはや電力変換における制限要因とはならないので、他の回路考察も行って、より効率的かつコンパクトな設計を可能にする必要があります。従来技術を超えてシステム性能が向上するように、回路レイアウトと部品の選択を検討することが重要です。結局のところ、GaNはシリコンのドロップイン置換品ではなく、新たなパラダイムといえます。
【著:Adam Vasicek, Alexander James Young/ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)】
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