マージンのない電源の危険性:Wired, Weird(2/3 ページ)
今回は、PFC(力率改善)回路が登場した頃に設計されたと思われるスイッチング電源の修理の模様を紹介する。電源設計において何を最優先すべきかを、あらためて再認識させる故障原因だった――。
コンデンサー破裂、ヒューズ切れはなぜ起きたのか?
さて、電解コンデンサーのトップの異常な亀裂と5Aのヒューズ切れは、なぜ発生したのか? まずは、故障箇所を確認して修理を試みた。破損した電解コンデンサーとヒューズを外し、電解コンデンサーの特性を確認した。図3に示す。
電解コンデンサーの残容量は、なんと27pFしかなく、150μFの容量が完全になくなっていた。
PFC回路を確認、コンデンサー耐圧は420V
この電解コンデンサーは耐圧が420Vで容量は150μFだ。スイッチング電源の型名からデータシートを探し、入力電源範囲を確認したらAC85Vから265Vだった。かなり広い入力電圧範囲だ。この電源はユニバーサル仕様でやはり一次側にはPFC回路が搭載されていた。
修理用の部品庫から電解コンデンサーを探したが、耐圧400Vで容量180μFしかなかった。取りあえず、これを実装して電源の動作を確認した。AC100Vを通電するとDC5VとDC24V電圧は正常に出力された。100W程度の負荷を付けても出力電圧は安定し、動作は正常に思えた。
通電5秒で、熱を帯びる
しかし、5秒程度しか負荷を掛けていないのに電解コンデンサーを触るとほんのりと温かかった。5秒というわずかな時間の稼働で電解コンデンサーが熱を持っていることが気になった。
無負荷の状態で、仮の電解コンデンサーの電圧をテスターで確認したら、
あっ やばい!
定格を超えた電圧が電解コンデンサーに印加されているっ!
なんと、「DC423V」が測定されたのだ。
テスターは平均値を表示するので、印加電圧の最大値は430V程度に達しているだろう。
この測定結果で電解コンデンサーの異常破損の原因が分かった。それは電解コンデンサーに最大定格を越えた電圧が印加されたため、漏れ電流が多くなり電解コンデンサーが過熱して電解液が揮発し内部圧力が高くなって、一気にガス状の電解液が外部へ漏れたと思われる。恐らく故障時には『バーン』という大きな破裂音があったに違いない。
今回、修理をしながら、思い出したエピソードがある。
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