オシロスコープの「ゾーントリガー」機能って何?:5つの代表的な質問に回答します(4/4 ページ)
「ゾーントリガー」はオシロスコープに搭載されている機能で、従来搭載されているトリガー機能を補完するだけでなく、これまでにないトリガーを実現することが可能となっている。本稿では、オシロスコープのゾーントリガー機能に関する代表的な5つの質問に対してお答えしよう。
メーカーによって異なる比較項目
その他の違いとしては、ゾーントリガー機能を実行した時に要する時間になる。これは、特定のゾーントリガー機能の設定に対する波形更新レートの測定で比較できるが、ゾーントリガー機能は、まれにしか発生しないイベントを見逃すことがある。
これに対して、ハードウェアトリガー機能は、トリガーイベントを確実に捕捉する唯一の方法である。このため、波形更新レートの低下に伴うデータの取りこぼしは、それほど重要な比較ポイントではない。むしろ、波形更新レートの低下に伴う操作性の低下や、波形の見え方が著しく損なわれることへの影響が大きい。
上記以外の比較項目は、オシロスコープのメーカーによって異なる。一部のメーカーは、ゾーンの形状として四角形のみが用意されており、他のメーカーでは任意のゾーンの図形を描画できる。四角形は、ほとんどの場合において十分だが、任意のゾーンはより詳細なイベントの切り分けに対して非常に有効である。
また、ゾーンサイズ、形状、ソース、タイプの変更をどれだけ簡単に行えるのか? ゾーンの追加や削除のやりやすさを各オシロスコープで確認することが重要だ。実際に使用すると、これらの作業は購入前に想像していた以上に頻繁に行われるからである。
EMIのノイズ評価などにも
これまで述べてきたように、ゾーントリガー機能は、従来のハードウェアトリガーを補完する機能であり、その利便性と有用性から非常に注目されている機能である。
ゾーントリガー機能は継続的に改善され、従来のハードウェアトリガー機能では分離することが困難であった不具合波形や特定のパターンを、簡単に切り分けることが可能である。そして、最近のテクノロジーの進化により、演算波形やFFTによる周波数スペクトラム信号にゾーンの条件を適用する機能が含まれることで、その応用範囲が従来の電気・電子回路のデバッグから、EMIのノイズ評価などにも広がりつつある。
【著:Joel Woodward/Rohde & Schwarz】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 今さら聞けない5G入門、要件実現に向けた新技術
2020年の一部商用化に向け、2017年より実証実験が日本でも開始される見通しの5G(第5世代移動通信)。通信事業者や大学、計測器メーカーがその要件実現に向けて精力的に研究開発に取り組む。本連載では、計測器メーカーであるローデ・シュワルツの視点から5Gの動向をお届けする。 - USB 3.1/Type-Cの概要と測定の肝
高速伝送や電力供給(PD:Power Delivery)機能をサポートするUSB 3.1およびType-Cが登場し、注目を集めている。USB 3.1およびType-Cコネクタを搭載した機器を開発するに当たって、システム設計者が知っておくべき試験/評価方法について解説する。 - 部品選定から低電圧/高電圧回路測定まで
電源設計に求められる要件は、多くなっています。高効率/高電力密度、迅速な市場投入、規格への対応、コストダウンなどを考慮せざるを得ず、電源設計におけるテスト要件も複雑化しています。そこで、本連載では、3回にわたって、複雑な電源設計プロセスの概要と、プロセスごとのテスト要件について説明していきます。 - USB PDの評価
連載の最終回となる今回は、「USB PDの評価」に関して、PD(Power Delivery)のコンプライアンス試験や動作検証などのテストソリューションについて述べる。