連載
「Thread」における6LowPANの活用(前編):IoT時代の無線規格を知る【Thread編】(4)(3/3 ページ)
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。今回は、IPv6と802.15.4技術の統合を実現するレイヤーである“6LoWPAN”について解説していく。
IPv6パケットカプセル化
ここまで述べてきた機能を実現するために、6LoWPAN層はIPv6パケットを取り出し、カプセル化ヘッダーで包み、802.15.4MAC層と物理層を使う無線通信へと送られる。
6LowPANパケットはIPv6パケットと同じ原理で作られ、それぞれの機能のためのヘッダーがスタックされる。それぞれの6LowPANヘッダーは図3に示されるように、ヘッダーに先立ちその型を示すディスパッチ値(Dispatch value)が含まれる。
Threadは、下記の6LowPANヘッダの型を使用する。
- メッシュヘッダー(リンク層のパケット転送のため)
- 断片化ヘッダー(IPv6パケットを、いくつかの6LowPANパケットに断片化するため)
- ヘッダー圧縮ヘッダー(IPv6ヘッダーの圧縮のため)
6LoWPAN仕様(RFC4944)は、もし1つ以上のヘッダーが存在する場合、必ず上に列記した順序で記述されなくてはならない。図4の例では、パケットは6LoWPANペイロードと、圧縮されたIPv6ヘッダーで構成されている。
図5の例では、6LoWPANペイロードと圧縮されたIPv6ヘッダー、断片化されたIPv6ペイロード、メッシュヘッダーで構成されている。
上記の例では、断片化されたペイロードの一部を含むが、残りのペイロードは後続のパケットにて、図6に示すようなパケットで送られる。
ここまで、Threadと6LoWPANの関係性と、IPv6パケットカプセル化について紹介してきた。後編では、6LoWPANアダプテーション層が持つ残りの機能を紹介する。
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