MOSFETの実効容量値を簡単に求める術:SJ-MOSFETなど最新FETを適切に評価しよう(3/3 ページ)
MOSFETのデータシートには、1つの測定電圧での出力静電容量値が記載されています。この値は、従来のプレーナ型MOSFETには有効でしたが、スーパージャンクションなど複雑な構造を用いる最新のMOSFETの評価には適していません。本稿では、最新のMOSFETの評価に有効な実効容量値を、より簡単に求める方法を探っていきます。
精度
データシートの単一点出力静電容量の測定値を使用すると、出力静電容量の推定が極めて不正確になる可能性があります。この点を取り込む場所の電圧は、データシートごとに異なり、静電容量曲線全体を正確に表すことはできません。エネルギー関連および経時変化の実効出力静電容量値を使用すると、計算がより正確になります。
実効静電容量値は概算値ですが、図5および図6に示すように、ほとんどの計算で十分、正確です。実際のQOSSおよびEOSS値は、推定値と80% BVDSS時点で類似しています。QOSS値を使用して、式12で電力損失を計算することができます。ここで、POCは出力静電容量に蓄積された電荷に起因する電力損失を表します。この等式はユーザーが容易に理解し、適用できます。また、MOSFETで駆動電力損失を計算する最も一般的な方法と偶然に同じ形になります。もちろん、全スイッチング電力損失を求めるには、スイッチング時の導通損失も考慮する必要があります。
結論
動作周波数が上昇し共振トポロジーがより優勢になると、MOSFETの出力静電容量が回路性能において大きな役割を果たし始めます。出力静電容量と電圧は非線形関係にあるため、計算は煩雑で時間がかかる可能性があります。実効容量値は容易に求めることができ、許容精度を維持しながら計算を大幅に簡略化できます。
参考文献
※1) Young, Sungmo. "Considerations on Output Capacitance for Soft Switching Converters." EE Times Europe (2011).
※2)Schultz, Charles. "Power MOSFETs: Reliable MHz Operation Requires Attention to Device Characteristics." PCIM magazine (1999).
※3)International Rectifier. "A More Realistic Characterization of Power MOSFET Output Capacitance Coss."
※4)Kutkut, Nasser H, Deepakraj M Divan and Randal W Gascoigne. "An improved Full-Bridge Zero-Voltage Switching PWM Converter Using a Two-Inductor Rectifier." IEEE Transactions on Industry Applications (1995): 119-126.
※5)Drofenik, U., A. Müsing and J. W. Kolar. "Voltage-Dependent Capacitors in Power Electronic Multi-Domain Simulations."
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