負電圧電源をロジック信号でオン/オフする:Design Ideas パワー関連と電源(2/2 ページ)
今回は、ロジック信号によって負電圧電源を素早くオン/オフするときに役立つ回路を紹介する。
正電圧電源を検出する簡単な回路
図4は、正電圧電源を検出する簡単な回路である。検出しきい値V+はツェナーダイオードD1の降伏電圧、Q1のVBE、各抵抗の値およびMIC4451の入力しきい値によって決まる。ベース電流誤差を無視すると、Q1のコレクター電流の概略値は、IC=IA−IBすなわちIC={(V+−VZ−VBE)/RA}−VBE/RBとなる。
V+=7Vとし、5.6V のツェナーダイオードと図4の部品値を用いると、ICについて解くことができ、IC=(7−5.6−0.65)V/1.8kΩ−(0.65V/3kΩ)=(0.416−0.216)mA=0.200mAが得られる。MIC4451の入力しきい値は標準で1.5Vであるので、この回路はRCIC=1.5Vのときに作動し、RC=1.5V/0.2mA=7.5kΩとなる。
この回路は正電源の電圧値をセンシングし、その値があるしきい値を超えると、負電源をターンオンにする。
右=図5:正電圧電源検出時における負電圧電源の特性 (クリックで拡大)
図4の回路では、正電源の電圧が1.5Vを超えると負電源をターンオンにする。
図5は、正電圧電源検出による負電圧電源スイッチのオン/オフ動作の詳細である。
以上のように、高速MOSFETゲート駆動用ICの新しい用途として、負電源のスイッチ回路に利用することが可能である。MIC445xファミリーを用いれば、ロジック信号と容易にインタフェースを取ることができる。簡単な回路を用いて、正電源電圧のレベルを検出し、正電圧があるしきい値を超えたときに、負電源をオンにすることが可能である。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。
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