Threadネットワーク内のバッテリー駆動デバイス:IoT時代の無線規格を知る【Thread編】(10)(2/2 ページ)
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。最終回となる今回は、バッテリー駆動デバイスの基本動作とパフォーマンスの比較を紹介する。
スリープする子機が使うメッセージのサイズとフォーマット
スリープする子機の送信時間、つまりバッテリー寿命に影響する無線パケットフォーマットは、2種類ある。データPoll MACコマンドフレームとメッセージ送信に使用する通常のデータフレームである。
図3は、データのPollにも使用されるIEEE 802.15.4MACコマンドフレームである。
Threadのアドレスフィールドは、2バイトのPANID、2バイトのショート宛先アドレス、2バイトのロング送信元アドレスが含まれる。コマンドペイロードはない。データのPollでもセキュリティを保つため、6バイトのセキュリティヘッダと4バイトのMIC(Message Integrity Check)を含む。データPollコマンド長は、22バイトになる。
図4は、Threadのデータパケットの全体構造を示す。
このパケットは、アプリケーションのセキュリティを含まないで35バイトのオーバーヘッドである。オプションのDTLSセキュリティが使われた場合は、64バイトだ。このパケットフォーマットが、データを送信する無線機の送信時間を決める。
メッセージ送信に要する時間
今までの解説は、バッテリー駆動デバイスの基本的動作の詳細であった。しかしながら、実際には、どれだけ長く組み込まれた無線機とソフトウェアがこれらのオペレーションに時間を要するかが問題となる。
表1では、バッテリー駆動エンドデバイスのThread動作をミリ秒単位で示す。
Pollを含む全てのパケットは、MAC層のセキュリティを使用する。表中で最大と最小の時間が生じるのは、CCAの時間のばらつきがあるためである。これらの処理で生じる消費電力は、使用する無線機とマイコンと消費電流プロファイルに依存する。
一例を挙げると、データなしでPollを行うときの平均消費エネルギーが100μCであった場合、CR2032電池で10秒おきにPollをすると約2.6年の電池寿命に相当する。
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