マイコン制御不要のリチウムイオン電池監視LSI:電池の安全性を高める機能搭載
ロームグループのラピスセミコンダクタは、マイコンによる制御が必要ないスタンドアロンタイプのリチウムイオン電池監視LSI「ML5245」を発表した。温度検出機能、充放電用FETの過熱防止機能、放電用FET強制オフ機能、セル電圧読み出しといった、電池の安全性を高める機能を4つ備える。
ロームグループのラピスセミコンダクタは2017年4月12日、最大13個の直列セルに対応したスタンドアロンタイプのリチウムイオン電池監視LSI「ML5245」を発表した。主に電動軽車両(LEV:Light Electric Vehicle)のリチウムイオン電池パック向けとして展開する。
ML5245は、マイコンによる制御が不要なスタンドアロンタイプの電池監視LSIだ。そのため、 マイコンのプログラム開発という手間の掛かる工程の削減により、電池パック開発期間の短縮に貢献できる。また他の電池監視LSIと同様、パワーダウン時の消費電流が0.1μA(典型値)なので、電池パック保管時の電流損失を最低限にとどめ、長期間の電池パック保管を可能とする。
電池監視LSIとしての基本機能に加え、温度検出機能、充放電用FET(NMOS-FET)の過熱防止機能、放電用FETの強制オフ機能、セル電圧読み出し機能を搭載している。これら4機能でもって、電池パックの安全性を高める。
温度検出機能は、セルモジュールに設置された温度センサーからモジュール内の温度を直接検出し、高温状態や低温状態を監視保護する。マイコンによる制御なしで、充放電用FETのオンとオフを制御できる。
充放電用FETの過熱防止機能は、充放電用FETのボディーダイオードに一定量以上の電流が流れると、FETがオンになって過熱を防止。これにより、放熱対策用FETを不要にする。また放電用FET強制オフ機能は、外部マイコンなどから信号を入力させ、放電制御用FETを強制的にオフさせる。
セル電圧読み出し機能は、各セルの電圧を出力する役割を担う。同機能を使えば、外部マイコンを活用して本LSI らの各セルの出力電圧値を利用し、電池パックの残量の算出や、各セルの寿命の予測などが可能となる。
ラピスセミコンダクタは、ML5245のサンプル出荷を1個当たり800円(税別)で2017年4月から、2017年7月には月産10万個体制で量産を開始する。生産拠点は、前工程が宮崎県のラピスセミコンダクタ宮崎、後工程がタイのROHM Integrated Systems(Thailand)となる。
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