ダイオードで学ぶパワーエレクトロニクスの基本:イチから学ぶパワエレ入門(1)(4/4 ページ)
半導体素子の基本を学びながら、パワーエレクトロニクスの核心に迫っていく本連載。今回は手始めとして、電気と半導体の基本を簡単に説明しつつ、半導体素子の基本であるダイオードを使った電力変換について解説していきましょう。
平滑回路
さて、図12と図14で出力として現れた波形は、いずれもプラス側の波形だけなので直流電力ですが、図9の直流波形とは違い凸凹のある形をしています。この凸凹の最高値から最低値の大きさと、出力電圧の平均値の比率をリップルといい、この値が小さいほど直流電源としては理想的(直線状)です。このリップルを小さくするために、図15のように整流回路の出口にコンデンサーを並列に接続した回路を「平滑回路」といいます。コンデンサーは電源から供給される電荷をためる働きをする素子なので、充放電できる電池が付いたイメージを持っていただければ大丈夫です。
さて、平滑回路はどのような動きをするのでしょうか。コンデンサーは充電される電荷に比例して電圧が大きくなり、供給される電圧が自身の電圧より大きい場合に充電され、逆の場合に放電します。コンデンサーと抵抗で構成されるRC回路では、コンデンサーの電圧は図16のように変化するため(RC回路の過渡現象で調べると計算方法などが出てきます)、平滑回路の出力波形は図17のようになります。
電源電圧が高いグラフの赤い部分では、電源から電力が供給されるとともに、コンデンサーに充電されます。電源電圧が低くなると、コンデンサーは放電をはじめ、オレンジ色の部分が電力として使う場所に供給されます。これを繰り返すことで、グラフの凸凹が慣らされていきます。コンデンサーの容量をより大きなものにすることで、さらにグラフを直線に近づけることができます。なぜなら、コンデンサーの容量を上げるとより多くの電荷を蓄えられ、図18のように放電によって電圧が降下する速さが遅くなるからです。
以上、ダイオードで電力を交流から直流に変換するための回路について説明しました。このように半導体の動作と出力を読み解くことで、電力がどのように変換されるかが理解できます。次回は、他の電力変換方法について見ていきます。
筆者プロフィール
山路 哲平 / 日本電子専門学校 電気工学科
1987年生まれ。筑波大学にて電子回路やシステム制御などの弱電分野を学んだ後、専門学校にて送配電理論や電力用機器などの強電分野を学ぶ。その後、ビル管理会社にてオフィスビルの設備管理職に携わった後、専門学校にて電気工学科の教員および、専門学校校舎の電気主任技術者も務める。取得している主な資格は第二種電気主任技術者、エネルギー管理士など。
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